リフォーム産業フェア2018 「住宅業界の古い風習に物申す」トークセッションレポート
introduction
照りつけるような日差しの中、東京ビッグサイトにて開催されたリフォーム産業フェア2018。7月17日に開かれた「住宅業界の古い慣習に物申す」という刺激的なテーマのトークセッションに、BETSUDAI Inc.TOKYO CEOの林が参加しました。
新たな視点で住宅業界に風穴を空けている個性豊かなメンバー揃う本セッション、いったい何を物申すのでしょうか!?
住宅業界の楽しさと、これからの課題
福田善紀
(以下、福田)
いま、住宅・リフォーム業界には色々な問題があります。今日はそれを突破できるような新しい考え方やアイデアをみんなで公開議論します。テーマが「住宅業界の古い風習に物申す」なので、どんどん物申していきましょう!
加賀爪宏介
(以下、加賀爪)
物申したい事は皆さんいっぱいあると思いますが、面白おかしくやれてないですよね、僕らの業界。その理由として儲かってないとか、いい人材が来ないとか、色々な理由があると思いますが、どうしたら面白くできるのかを喋りたいなと思っています。
福澤佳恵
(以下、福澤)
私から見て業界の皆さんがとても楽しそうに感じるのは、やはりお客様の顔が見えることがポイントかなと思います。誰のために、何のために、自分たちの仕事があるのかがよく見えるのが楽しい。その一方で 辛いことがあるとすれば、私は「利益率」が大きなキーワードになると思っていて、労働集約型のため利益が出づらいことが課題なのではないでしょうか。
福田
素晴らしい回答ですね!では、「利益は楽しさに繋がるのか」という目線でお話いただけますか?
小村典弘
(以下、小村)
そうですね、やはり儲からないと楽しくはないですよね。当社は「人生楽しい人を増やす」というミッションステートメントを掲げていて、そのためにみんなでいろいろ改善しながら一人当たりの営業利益を高めましょうということをよく話します。今は生産性の向上のためにテクノロジーの活用を積極的に行なっています。結果、3年間で利益率が2.2倍に上がりました。
乃村一政
(以下、乃村)
登壇者の皆さんは勝手に楽しめちゃうメンバーですが、生産性という目線だと、次々と新しい技術やサービスが世の中に出てきていますよね。
林哲平
(以下、林)
建築は垣根が高いと思うんです。リフォーム、リノベーション、DIY、新築……この垣根が高すぎて、それがユーザビリティに繋がらない気がしています。風習に物申すなら、住宅業界と不動産業界にある古いルールを討論したいですね。住宅選びには古くからのルールや縛りが多いですが、それがネックのひとつになって、家づくりを楽しめてない人が多いとおもいます。
久田カズオ
(以下、久田)
皆さん、好きな服を着るのって楽しいでしょ? なのに、家の新築って上から下まで一緒で、みんな一緒のスーツを着ているようで。きっと今の日本の住宅って、住む人が楽しめてないと思うんです。作っている人から見ても、大工さんって昔は施主さんと一緒に家を作っていたのに、今は現場で図面通りに作るだけなんです。
川崎総一郎
(以下、川崎)
ちょっと違う目線での楽しさになりますが、GA technologiesでは、お客様や業者さんを集めてみんなでお酒を飲む会をやっていて、お客様から直接お話をいただけるんです。今業界にあるテクノロジー合戦みたいなところも、お客様は理解していて、新しい挑戦を一緒に見てくれています。
オンラインで無駄をそぎ、オフラインの時間を産み出す
福澤
もしかすると業務の中で細分化が進みすぎているところも課題としてあるかもしれません。オンライン業務とオフライン業務があると思うんですけれども、オンラインを使いながらいかに無駄を省き、オフラインでの改善のコミュニケーションをどう作っていくかというバランスを取るのが大事なのかなと感じました。
林
今の流れで言うと、オンラインとオフラインそれぞれとの付き合い方がありますが、オンラインを追求すればするほど、オフラインで生きてきた人たちの交通整理をしないと。そこを同時にとらえていかないと、片方が走りがちという話になってしまう。
川崎
弊社も全員がテクノロジーに精通しているわけではありません。業界らしいところと、テクノロジー最先端の両方を知っているメンバーがいることがこれからの業界にすごく大事なんじゃないかなと思います。あとは、もっと人材流動を他の業界と行うべきかとは思います。うちの会社も建設業界やリフォーム業界出身の人は全体の10%もいません。
どの会社も悩んでいる、採用
福田
では、新しい人材はどうやって採用しているんですか?
川崎
うちは紹介採用がメインです。4割から5割ぐらいを占めています。
山下智弘
(以下、山下)
僕らは新卒の比率が1/4なんですけど、中途で半分ぐらいが業界出身で半分ぐらいが全く違う業界からです。今みんな楽しそうに仕事しているし、いいことをしているということには多分全員自信がある。ただ、どうすればサスティナブルに続くかというところはまだ答えを持ってない。
久田
この業界に就職したいかどうかは、僕たち作り手側が楽しんでるかどうかが大事だと思うんです。僕たちは完成していない住宅を販売しているんですけれど、最後は施主さんに DIYで仕上げてもらっています。DIYを一緒にやると職人が先生になって、それまで商品だったものがDIYを通して自分の家になるんです。作った後に一緒にビール飲んだら最高に楽しい。それって家づくりにすごく必要で、そんな体験を僕らができたら、一緒にやりたい人が僕らの業界に入ってくるんじゃないかなと思います。
自分たちで、もっと楽しい住宅業界へと盛り上げる
福田
最後に、テーマに立ち返って「業界に物申す」コメントを頂きたいと思います。
加賀爪
今日の話の中でもいくつかポイントが出ましたが、経営者の年齢も古き慣習に閉じこもってる要素の一つという気がするんですよね。単純に年齢の高い人が通用しないというチープな話ではなく、やる気がないんだったらやめてほしいという思いは正直あります。常にこの業界のプロである意識があるのであれば、アンテナ立てようぜ、と。
久田
日本の住宅って35年ローンを組んでいるにも関わらず、壊すのはローン期間より短く、平均27年なんです。これには様々な問題がありますが、一番は持ち主がその家を愛してないからだと思います。愛してたら長く大切に使おうと思うでしょうけど、日本人は自分の家を愛していない。ただの商品だと思っているから買い換える。それを僕らの業界が作ってきたわけですけど、ここを変えないと何も楽しめないし住宅業界も変わっていけない。本当にその人が愛する家をみんなで作っていきたいなと思います。
山下
今日でたキーワードまわりを考えてきている会社が増えてきていて、10年前20年前との変化を感じます。これは次へのステップかなと思うので、引き続きできれば。
川崎
私は業界が変わっていくのに三つの大事な「流動性」があると思っています。一つ目は他業界や若手の採用はもちろん、業界の中でも色んな職種をやってみるなどの、「人の流動性」。2つ目は「サービスの流動性」。お客様にはまらないものは変えた方がいいし、どんどんサービスを改善していく。最後は「働き方の流動性」。リアルとデジタルの話も出てましたが、最終的にはどれだけ生身の人間が喜べる家や空間を作れるかがポイントです。ここに時間を割けるように、テクノロジーで無駄をそぎ落として、喜んでもらえる空間作りに一生懸命になれるのが大事かなと思っています。
小村
企業の良い所・悪い所は筒抜けの時代で、お客様のために動ける会社というのが今後のキーワードになってくる。これからは日本だけじゃなく、海外含めいろんなところから強い会社が攻めてくるでしょう。
乃村
テクノロジーを難しいと感じようが感じまいが、みんなスマホを持っています。例えば、欲しい情報はベッドで寝転がってスマホで見たいんですよね。全員がハイリテラシーになってるんです。住宅側、建築側がオンラインとオフライン混同するのは勝手ですが、ユーザーは先に行ってるので、早く追いついたものが勝つんです。物申すなら「もっとユーザー側に寄ろうよ」ですかね。
福澤
オンラインが進んでも、最後は人がキーワードになる業界だと思っています。そういう意味で言うといい人材の採用と、どう育成していくのかが論点になってくるのでは。どのようにして成長感を作っていくのかも、一つキーワードになってくるかなと思います。
林
持ち主が楽しめる家づくりというワードが出ていましたけど、前提として住宅業界ってエンタテインメントが少ない業界だと思うんです。僕はエンタテインメント業から住宅業界へ入ったのですが、楽しみや喜びといった感動を中心に置いている会社が好きです。住宅業界も、もっともっと感動を軸に盛り上がっていきたいですね。
福田
さて、みなさんからの物申し、いかがだったでしょうか? 続きは9月のキーパーソンセミナーで。ありがとうございました!
同じ住宅業界といえど、それぞれ様々な切り口でのサービスを提供している各社。しかし、アプローチは違えど「もっと住宅業界を良くしていきたい!」という想いをひしひしと感じるコメントが飛び交い、BETSUDAI Inc. TOKYOとしても、一緒に業界を盛り上げていきたいと改めて感じた時間になりました。
まだまだこのテーマで話し足りない、聞き足りない!……とお思いでしょうが、実はこの日のトークは前哨戦だったのです。本番は9月19日(水)、渋谷にて「住宅業界の古い風習に物申す」をテーマに語り尽くします。
変動する時代の中で、住宅業界はどうあるべきか。そして、住宅ビジネスをいかに進めるべきか。林は、“リノベーション市場の未来”という切り口から、これからのリノベーション・リフォーム業界のあるべき姿について物申します。どんどん変わりゆく業界の鍵はどこにあるのか、一緒に探ってみませんか?
この記事に関するサービス
LIFE LABEL
家を、暮らしをもっとエンターテインメントに。
ライフスタイルメディア「LIFE LABEL magazine」を中心に、日々の暮らしを楽しむための情報発信や、新しいライフスタイルの楽しみ方を、住宅デザインとあわせて提案する住宅エンターテインメントブランドです。
Dolive
シミュレーションからはじめる家づくり。
家づくりを試せるシミュレーションアプリと、アイデア・ヒントが集まるメディアを中心に、ユーザー発想で住みたい家やライフスタイルを考えていくためのシミュレーションプラットフォーム。
さまざまなブランドやクリエイターの発想から生まれた住宅デザインも提案しています。
スピーカー紹介
(リフォーム産業新聞社)※司会 福田 善紀
(リフォーム産業新聞社)※司会 福田 善紀
(株式会社ダンドリワークス 代表取締役) 加賀爪 宏介
(株式会社ダンドリワークス 代表取締役) 加賀爪 宏介
(BETSUDAI Inc.TOKYO CEO) 林 哲平
(BETSUDAI Inc.TOKYO CEO) 林 哲平
(9株式会社 CEO/クリエイティブディレクター) 久田 カズオ
(9株式会社 CEO/クリエイティブディレクター) 久田 カズオ
(株式会社GA technologies 執行役員) 川崎 総一郎
(株式会社GA technologies 執行役員) 川崎 総一郎
(リノベる株式会社 代表取締役) 山下 智弘
(リノベる株式会社 代表取締役) 山下 智弘
(株式会社クラスコ 代表取締役) 小村 典弘
(株式会社クラスコ 代表取締役) 小村 典弘
(SOUSEI株式会社 代表取締役) 乃村 一政
(SOUSEI株式会社 代表取締役) 乃村 一政
(株式会社リクルート住まいカンパニー SUUMOリフォーム編集長) 福澤 佳恵
(株式会社リクルート住まいカンパニー SUUMOリフォーム編集長) 福澤 佳恵
事前の質問設定はゼロで始まったいう本講演。とても50分の制限時間でまとまる気がしない(!?)キャラの濃いメンバーでのトークセッションは気になるワード頻出の時間となりました。本レポートではその中でも「住宅業界の楽しさ」「オンラインとオフラインの役割分担」「採用」、そしてメイントピックの「もっといい住宅業界になっていくために意識していくべきこと(業界の古い慣習に物申す!)」をキーワードにダイジェストをお送りします。