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「住宅会社と出会うハードルを下げたい」。新潟の工務店が複合施設を運営するワケとは?
INDEX
introduction
「いかに顧客接点をつくっていくか」
ビジネスにおいて、避けては通れないこの課題。近年ではカフェ×コワーキングなど新たなサービスを掛け合わせる取り組みが広がってきています。もちろん住宅業界も例外ではありません。
今回ご紹介するのは、新潟市内の工務店が取り組むユニークな事例「G.Lab NIIGATA」。
ここは、グリーンショップやカフェにアウトドアグッズの展示スペースなど、ライフスタイルを軸にした複合施設。2022年10月のオープン以来、地元メディアに取り上げられるなど早くも注目を集めています。
今回は、「G.Lab NIIGATA」を手掛ける工務店「全建」の代表取締役・渡辺公太さんに地方の工務店が複合施設をつくる理由やポイントをお伺いしました。
提案したいのは、“家”そのものよりも“ライフスタイル”
新潟市内の工務店「全建」が手掛けるG.Lab NIIGATA。
もともと輸入車のディーラーや建築資材倉庫として使われてきた建物をリノベーション。ライフスタイルを提案する複合施設として生まれ変わらせました。
1階にはグリーンショップとラジコンサーキット、そして取り扱っている住宅商品の一部屋を再現したモデルルームを、2階にはカフェやアウトドアフィールド、レンタルスペースを展開。アウトドアフィールドでは、高いデザイン性で愛好家の注目を集めている「ZANE ARTS」商品を新潟市内で初めて展示するなど、感度の高いお客さまの心も掴むキュレーションにもこだわっています。
店舗づくりのこだわりについて、全建の代表取締役・渡辺公太さんは話します。
「私たちが売りたいのは、“家”そのものよりも“ライフスタイル”。さまざまなグリーンを見て心を和ませ、テントの中でコーヒーを飲む……ここでは少しでもそんなライフスタイルを味わってもらえればと思うんです。」
また、あえてペットの同伴をOKにしているのも「ライフスタイルを提案したい」という気持ちの表れだそう。
「ペットも家族の一員。だけど、ペットと一緒に出かけられる場所って案外少ないんですよね。そんな大切な“家族”とリラックスできる場所を提供することもひとつのライフスタイルの提案だと思っています」
“一棟”ではなくて”一部屋”建てればいい。複合施設ならではのモデルハウス戦略
そもそも工務店が自社で複合施設をつくるメリットはどこにあるのでしょうか。
「まずは“住宅会社”のハードルを下げたかったんですよね。お客さまにとってみたら、住宅会社ってなかなか足を運びにくい存在。『相談に行ったら買わないといけないのではないか』というプレッシャーを感じていると思うんです。一般に開放しているモデルハウス見学会ですら二の足を踏んでいる方も少なくありません。ましてや最近はコロナ禍の影響で見学会も予約制になっていることもあり、さらに足を運ぶハードルが上がっています。だからといって、何もしなければお客さまに知ってもらうことも、訪れてもらうこともできません。
「『家を建てたい』といった顕在的なニーズが生まれたときだけではなく、異なる動機で気軽に住宅会社と出会える場があれば……G.Lab NIIGATAをつくった背景には、そんな想いがありました。ここなら『グリーンを買おう』『アウトドアギアを見よう』『コーヒーを飲もう』といったように、出会うための間口を広げることができますから。」
たしかにグリーンショップの商品やカフェでのひとときを求めて訪れるお客さまも多いというG.Lab NIIGATA。そこから家づくりにつなげるため、一役買っているのがLIFE LABELの人気商品FREAK’S HOUSEの一室を再現したモデルルームです。
「モデルハウスって必ずしも“一棟”という単位で建てなくてもいいんですよ。“一室”さえあれば世界観は伝わりますから。『もっと見たい』というお客さまには、VRコンテンツもあるし、実際のモデルハウス見学会に参加してもらうこともできます。」
「しかも、モデルハウス見学会の場合はスタッフが常駐して、お客さまに対応しないといけませんが、G.Lab NIIGATAでは接客を前提としていません。ずっと開放しているので、お客さまは自由に出入りすることができる。しかも、小さな一部屋だから見学する時間もコンパクトに済みます。その方がお客さまにとっても、『家を見る』というハードルが低くなるんですよね。もちろん詳しく話を聞きたければ、スタッフを呼ぶこともできます。
私たちとしても、必要なときだけ接客すればいいので、事業運営上のメリットも大きいです。」
「まだ家を建てていない」人だけでなく「すでに家を建てた」人もターゲットに
顕在的なお客さまだけではなく、潜在的なお客さまも気軽に来てもらえるように……そんな狙いが込められているG.Lab NIIGATA。しかし、ターゲットとしてまだ家を建てていないお客さまだけでなく、すでに家を建てたお客さまも対象にしているといいます。
「OBさんとの継続的な接点づくりも、G.Lab NIIGATAの狙いのひとつ。どうしても、お客さまとの関係性って家を建てた瞬間がピークになりやすい。時折アフターメンテナンスでお話することはあるにせよ、せっかく長い時間をかけて家づくりというかけがえのない体験を共にした間柄。もっと継続的に関係性を持っていきたいという想いはありました。
ここではカフェやレンタルスペースの料金をサービスしながら、OBさんに気軽に訪れてもらえる仕組みを整えています。」
果たして、OBと接点を持ち続けることで、事業にはどのような影響があるのでしょうか。
「大きいのは、新規のお客さまの紹介ですね。全建の場合、営業パーソンがいないので、OBさんからの紹介がもっとも重要な受注経路になります。
信頼できる知人が気に入っているもの・勧めているものって、ものすごく説得力がありますよね。だからこそ、OBさんに『全建って良い会社だな』と感じて、発信してもらいたい。全建にとっては、OBさんがいちばんの“営業パーソン”になっていると言っても過言ではありません。」
「しかも、気軽に入れる複合施設だから、OBさんも勧めやすいと思うんです。実際は、せっかく紹介しても相手が『せっかく勧めてくれたのに、別のところで家を建ててしまったら申し訳ない』と感じて、結局住宅会社に相談しないケースもしばしば。でも、G.Lab NIIGATAだったら『グリーンショップやカフェも入っている複合施設だから、まずは気軽に覗いてみたら?』と提案できる。『住宅会社に相談する』というアクションをとる一歩手前のワンクッションになるんですよね。」
まだ家づくりに興味がなくても、ロゴを見て、覚えてもらえればいい
2022年10月のオープンから約2ヶ月ほど。徐々にではありますが、手応えも生まれてきているといいます。
「グリーンショップやカフェを目当てに訪れたついでに、ふらっとモデルルームに立ち寄ってくれる方も多いですね。まだ家づくりを考えていなかった若い方、すでに家を建てられた家族連れなど客層もさまざまです。直接、この場で家づくりにつながらなくても構いません。この施設に立ち寄って『いいな』と感じてもらって、全建のロゴを目にしてもらうこと。これが重要だと考えています。
そして、家づくりをしたくなったとき、もしくは家づくりをしたい知人ができたとき、街中にある看板を見て『あのロゴ、G.Lab NIIGATAで見たやつだ。全建って家づくりをしている会社だったんだ。あそこに頼めば素敵な家を建ててくれるかもしれない』と思ってもらう。まずは、こうした状態を目指したいと思います。」
最後に、これからG.Lab NIIGATAでどんな展開を生み出していきたいのか聞きました。
「もっとさまざまな人に来てもらうための間口を広げていきたいですね。地域のつくり手さんを呼んでマルシェをしたり、アウトドアグッズの販売会をしたり、大型スクリーンを使ったスポーツのライブビューイングをしたり。あとは、DJブースもあるので、知り合いのDJを呼ぶのもおもしろい。OBさんにもさまざまな特技を持った方がいるので、そのようなスキルを披露するイベントもいいかもしれません。
自分たちが自由にオーガナイズできる“場”を持ったことで、さまざまな人を巻き込んだコンテンツもつくりやすくなりました。地域に根ざした企業として、この場を起点にさまざまな取り組みを発信できればと思います。」
新潟のライフスタイルシーンに新たな1ページを加えていく「G.Lab NIIGATA」。
すでに建築士がカフェスタッフとして店に立つ企画や予約不要の3D内覧会などのイベントを実施しているそう。
これからも住宅会社と出会うハードルを下げていく「G.Lab NIIGATA」の取り組みから目が離せません。
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