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Dolive 対談 / インタビュー
理想の暮らしを自ら叶える。「PICNIC MOTEL House Project」に込められた思想とこだわり
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リファレンスから新しいデザインが生まれる。ファッションと住宅の交差点。
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自由な想像力で創造する。Dolive©️が手がけるWATCHTOWER SAUNA開発の裏側。
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「SEAWARD HOUSE PROJECT」がつくりだす住宅業界の転換点。OCEANS統括編集長・原氏×Dolive主宰・林 対談
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Dolive meets Jeep!家も車も大事なのは“どう楽しむ”か。コラボレーションから見えてくる、購入した先を見据える重要性。
戦略と徹底力で実現。2年で棟数を倍増させた成長の軌跡

INDEX
introduction
これからの工務店、生き残っていくためにはどうしたらいいのか?受注棟数を伸ばすためにはどうしたらいいのか?先代から事業を継ぐ中で、時代に合わせ、柔軟な経営戦略をとることで、会社の勢いを増してきた次世代の社長たちに話を聞く企画が「次世代社長」です。
今回取材したのは、山口県で住宅や店舗の設計・施工を行う株式会社時守代表取締役の長安洸忠様。2017年に設立後、住宅業界が右肩下がりの厳しい状況にある中、2022年からの2年で受注棟数を倍以上に増やしています。長安さん曰く「派手なことや突飛なことは特にしていない」とのこと。その中でどのように棟数を増やしてきたのか。話をお聞きしました。
課題を分析して見えた、大手ハウスメーカーとの対抗軸
LDP編集部:まずは時守の設立の背景から教えてください。
長安:時守は、もともと大工として働いていた父と、別の住宅会社で設計業務を行っていた僕で2017年に設立した工務店。下請け業務から始めて、徐々に元請けで注文住宅や店舗の設計・施工を行うようになっていきました。

LDP編集部:工務店を立ち上げてから事業を伸ばしていく過程では、どんな課題に直面していたんですか?
長安:せっかく問い合わせから初回の商談にこぎつけても、2回目、3回目以降の商談にはなかなかつながらなかったんです。
そこで「どんな住宅会社にお客様を取られてしまったのだろう」「その住宅会社とうちで何が違うんだろう」と約1年かけて課題を分析していきました。
お客様に他社から頂いた資料を見せてもらったり、競合のサイトやインターネットでの反響を調べたり。あの手この手で情報を集めつつ、自分たちが取るべき戦略を考えたんです。
LDP編集部:結果的に、どのような戦略が見えてきたのでしょう?
長安:調べてみると、大手のハウスメーカーに流れてしまうケースが多かった。それならば、逆に「大手ハウスメーカーで検討していたけれど、そこでは要望が満たされていない」層をしっかりキャッチすることが重要だと考えたんです。
大手ハウスメーカーでは満たされず、私たちのような地域工務店で満たすことができる価値は何か。それを考えると、叶えたいライフスタイルに対する自由度の高い提案だと思いました。
LDP編集部:それが勝ち筋になると。
長安:はい。お客様が大手ハウスメーカーに求めているのって「安心・安全」といった側面が強いと思うんです。そうした性能・保証面は、もちろん私たちもある程度担保しますが、大切なのは自分の好きなライフスタイルをしっかり表現できるかどうか。そこを勝負軸にしたいと考えました。
実際にお客様に聞くと、アレンジしたい部分について相談しても「それは難しいかもしれません」と言われて諦めてしまっていたというケースもあると伺ったこともあって。それならば、カジュアルに相談に乗って、柔軟に対応できるスタイルができたらお客様に喜んでもらえるのではないか。ひいては、受注の確度を高めて、地域でポジションをつくれるのではないかと思ったんです。

それでも、どうしても保証面を気にされるお客様もいます。その辺りの懸念も払拭できるように、自社でしっかり保証会社をつけてカバーする体制を整え、お客様を取りこぼさないようにしてきました。
ターゲットを拡張するための住宅フランチャイズ加盟戦略
LDP編集部:注文住宅を手掛けられている中で、住宅フランチャイズを導入したのはどういった背景からなのでしょう?
長安:時守の家づくりのスタイルや住宅のデザインに共感してもらっても、コストがネックになって受注を取りこぼしてしまうケースがあったからです。高い自由度を担保しつつ、ゼロから設計するコストを抑えることで「価格があと500万安かったら……」といった層をちゃんと取りこぼさないようにする。そんなイメージで住宅フランチャイズに加盟して規格住宅を導入することを検討しました。

LDP編集部:そして、2022年にDoliveに加盟いただいたんですね。どんな視点で、Doliveを選ばれたのでしょうか?
長安:せっかくデザイン性を追求した注文住宅で実績を重ねてきたのに、デザインにこだわりのないローコストの住宅商品を取り入れてしまうと、一気に自社のブランドイメージが崩れてしまいます。Doliveは強いコンセプトのもとデザイン性が高い規格住宅がラインナップされているから、もともとターゲットにしていた感度の高いハイエンドな層にも響くイメージが湧いたんです。
LDP編集部:となると、注文住宅と規格住宅でターゲットを分けるというよりは、同じターゲットに幅広い選択肢を提供するというイメージでDoliveに加盟したと。
長安:はい。「注文住宅 or 規格住宅」でお客様の層を分けるというイメージではないですね。注文住宅でも規格住宅でも、入り口はどこでもいい。「時守らしい建築」のラインナップを用意して選んでもらう、といった状態がつくれるとお客様も検討しやすいと思うんです。

LDP編集部:その狙いはいかがでしたか?
長安:Doliveの規格住宅と既存事業の注文住宅、それぞれにいい相互作用が生まれています。たとえばDolive商品のひとつ「No.00」のモデルハウスを見て注文住宅を頼む方もいれば、注文住宅を検討していたけれどDolive商品にする方もいます。狙いは間違っていなかったと思いますね。
Doliveの素材を活かしつつ成果を出す
LDP編集部:新設住宅着工戸数が年々減少するなど、住宅市場全体が厳しい状況にある中、時守さんはDolive加盟後、約2年で受注棟数を倍以上に増やしたと聞きましたが。
長安:はい。これまでの2年間で年間棟数が5〜6棟から14棟へ増えました。でも、特に突飛なことはやっていません。自分たちが持っているリソースを活かしながら、やるべきことの質を上げていくだけです。
たとえば集客面で言うと、Doliveが提供してくれる宣材素材をちゃんと使うこと。自社ホームページやパンフレットなど、写真が必要なシーンってよくあると思うんですが、そこでDoliveの質の高い素材を使用することで期待値をつくることができます。

特に多くの人が検索する大手住宅情報ポータルサイトでは、そこまで質の高い素材が並ぶことは稀。だから、住宅の特徴的なデザインにフォーカスした素材を並べてアピールすれば必然的に差別化が図られるので反響は大きいですね。
LDP編集部:商談面ではどのような工夫をされていますか?
長安:お客様のイメージをスピード感を持って可視化することは意識していますね。時守では、基本的に初回の商談で理想のライフスタイルや家に求めることをヒアリングしたあと、2週間以内には2回目のアポを取ってパース図を出すようにしています。そして、3回目の商談で見積もりと図面、資金計画を提出する。そんなスピード感です。
仮に2回目の商談で提示するパース図に多少のイメージの相違があっても、お客さんが「わたしの話を聞いて、かたちにしてくれた」という感動を与えることが大事。それが2回目、3回目の商談につながっていきますから。それに早い段階で「ここはもっとこうしたい」といったフィードバックを得られれば、よりイメージをすり合わせる判断材料が増えます。

設計と営業がオーバーラップする"遊び"のある組織づくり
LDP編集部:そのようなスピード感を持った営業提案を会社全体でできるようになるには組織づくりも重要になると思うのですが、いかがでしょうか?
長安:その通りです。お客様が高い自由度で家づくりを楽しめるのと同様に、社員自身も自由度の高い営業提案ができるような体制づくりを心がけています。その方が社員自身のパフォーマンスも高まるはずですから。
LDP編集部:具体的にはどのような仕組みなのでしょうか?
長安:たとえば時守では、営業は顧客対応だけ、設計は図面を描くだけ、ではありません。お互いが自分の領域に閉じるのではなく、少しだけオーバーラップする。そうすることで自分が提案したいことをスムーズに表現しやすくなるんです。
たとえば設計も初回商談のヒアリングをやってみる、営業も簡単な設計ソフトを触れるなど。もちろん最終的には、営業・設計ともにフォローは付きますが。

LDP編集部:そのような体制をうまく機能させるコツはありますか?
長安:設計がヒアリングするときには質問リストをつくったり、営業がソフトを触るときにはマニュアルを準備したりといった仕組みは整えています。でも、あえて「これ通りにしなさい」とガチガチに縛ることなく、それぞれがやりやすいようにカスタマイズできる余地を残すようにしています。
LDP編集部:「自由度の高さ」は、お客様だけでなく社員に対しても重要なんですね。
長安:はい。組織には、余白や遊びが大切なんじゃないかと思っています。時守は、設計と営業だけではなく、事務の方も、大工の方も、みんな全員野球でお互いに混ざり合って、話し合いながら仕事を進めています。
ガチガチに領域やフローを固めるのではなく、柔軟に動き、柔軟に提案していく。そんな風土が時守らしさであり、大手ハウスメーカーなどの競合に負けない強みなのかもしれません。これからもそんな強みを活かしつつ、より地域で存在感のある工務店に成長できればと思います。

「『こうじゃなくてはいけない』といった固定観念は持たない方がいい」。そう話す長安社長。そんな余白や遊びを大切にした柔軟さこそが競争力になり、年間棟数の増加という結果につながっています。規格住宅の活用や集客や商談の取り組みも、参考にできそうな視点がありました。「突飛なことはしない」という中でも成長を続ける時守は、地方で生き残っていく工務店の好例になるかもしれません。