マーケットをトコトン予測!7人のキーパーソンが語るミライ思考の住ビジネス
introduction
2021年9月15日にパシフィコ横浜で開催された「リフォーム産業フェア2021 in東京」にて、CEO林がキーパーソントークセッションに参加しました。テーマは「マーケットをトコトン予測!7人のキーパーソンが語るミライ思考の住ビジネス」。住宅業界の各分野で活躍する7人が、それぞれの視点から意見を交わしました。今回のトークセッションを通して見えてきたのが、多様化する消費者ニーズの現状と、オンラインで完結する住宅購入のスタイルが現実のものになっていくという、住宅業界の新しい姿でした。
コロナ禍で変化したマーケットの現状
ダンドリワークの加賀爪氏司会のもと、トークセッションがスタート。コロナによって変革期が訪れた住宅業界のマーケットについて、消費者ニーズの変化にフォーカスして意見が交わされました。
高重さん
コロナ禍の一番大きな変化は、「家の中での過ごし方」に対して消費者の関心が高まったことだと思います。RoomClipのユーザー数を見ても、2020年3月から5月の間に約2倍に急増しました。その後も「住まいや暮らしをより良くするために変化を加える」といったモチベーションは、高い状態のまま維持されています。最近感じるのは、「家をより良くしたい」という改善欲求と、家の外でやっていたことを中でやろうとする欲求が、多様なライフスタイルに合わせて最適化されつつあるということです。リモートワーク一つとっても、家族で暮らしている方と独り暮らしの方で、それぞれが求めるリモートワークのあり方は異なります。ある程度、「このやり方が良いよね」といった情報が集約されてきたことで、多様なライフスタイルに応じてセグメントされた新たなマーケットが生まれてきたなと感じています。
林
コロナ禍で急速にデジタルシフトが進む中、その中でも特に「おうち時間」というテーマに関するコンテンツのエンゲージが高まっていると感じています。ここで大切にしていただきたいのが、注目を集めているものを積極的に取り入れようとする姿勢です。「後乗りになるからやらない」ではなく、関心が集まっているものに対して、積極的にコンテンツアウトしていく必要があると考えています。
4年程前、LIFE LABELと雑誌「LaLa Begin」がコラボした「ベランピングライフ」という企画で「日本雑誌広告賞」を受賞した際、バルコニーやベランダを活用したライフスタイルが注目され、大手ハウスメーカーが続々と取り入れていくといった動きが見られました。皆さん、他社との差別化を意識されていると思いますが、新築・リフォーム・リノベーション、どのジャンルであっても、エンドユーザーである消費者から見れば同じ「メーカー」でしかありません。この事実を受け止めたうえで、消費者の夢を叶えるための手法を持っておくことが大切になると考えています。
鎌田さん
リノベーション業界でも、「自分らしい暮らし方」がクローズアップされてきた印象があります。コロナ禍以前は、リノベーションする人に対して「デザインリテラシーが高い人」、「オシャレな人」といったイメージが強かったのですが、現在は「こんなスペースを作りたい」といった動機からリノベーションする人が増えたことで、裾野が一気に広がりました。更に言うと、新築・リフォーム・リノベーションといった垣根がなくなり、住まいに対してフラットに考えることがスタンダードになるのではないかと感じています。
消費者が求めるニーズを理解するために必要なこと
メディア運営、新築、リノベーションに携わる3人の意見から、「住まい」に対する意識の多様化が進んでいる現状が見えてきました。それでは、実際の購買行動はどのように変化しているのでしょうか。事例を交えながら、住宅業界が抱える課題と解決策について、熱い議論が交わされました。
荒川さん
コロナ禍で住まいへの関心が高まりましたが、現在は「興味」から「実現」のフェーズに変化してきた印象です。1年半程前から「デジタルシフトの必要性」について何度も議論を重ねてきましたが、今まさに現実のものになったと感じています。一番印象的なのが、金額関係なく、オンラインで完結する購入の形が、現実を帯びてきたことです。弊社の事例で言うと、キッチン本体や壁材、レンジフードに水洗、収納アイテムなど、全ての要素をパッケージにした70万〜80万円の「キッチンセットアップ」が、お問い合わせなし・オンラインのみで購入に繋がりました。私たちも非常に驚きましたが、「家をオンライン上で買う時代」が近い将来やってくるのではないかと期待を感じています。
林さん
「オンライン上で家を買う時代」はもう既にきていたのだと思います。「ZERO-CUBE+FUN」という規格住宅商品をリリースした11年前、雑誌「Pen」に載せたこの商品の広告を見て、この家を建てたいという1件の問い合わせがありました。本来、商品を見なければ購入には繋がりませんが、実物を見ないまま購入に繋がったのです。この実例をきっかけに、ZERO-CUBEを主軸としたFC展開を全国に広めることができました。今後、オンライン上で購入できる環境さえあれば、家をオンラインで購入することも当たり前になっていくのではないかと感じています。そのためには、オンライン上の棚にたくさんの商品を並べておけるよう、積極的に商品・サービス開発に取り組むことが必要不可欠です。さらに、オンライン上でお客様に選ばれるために、オウンドメディアを通じて商品以外の様々な情報を発信していくことが重要だと思っています。
加賀爪さん
住宅業界が抱える課題の一つとして、「消費者が求める情報発信ができていない」ことが挙げられるでしょう。不動産の情報サイトに、住宅の写真が少ししか掲載されていないということをよく目にします。住宅のプロが自分たちの都合で情報発信をサボってしまい、消費者にとって不親切な情報になっているケースが多いのではないでしょうか。今後は、商品の情報だけでなく、施工事例やお客様の声も全て見せていくことで、業界全体として情報発信に対する意識を変えていく必要があると感じます。
友安さん
住宅業界全体で言うと、「消費者が何を求めているか分かっていない」ことが大きな課題だと感じています。例えば、Amazonは「より簡単に買える」ことを追求していますが、私たちが扱う住宅商材は、「これを買うとどんなライフスタイルが実現できるか」を伝えることが本質であり、それによって初めて購買に繋がるのではないでしょうか。海外ではLIVEコマースが当たり前になりつつありますが、日本で普及する確率は低いと予測しています。どちらかというと、動画をアーカイブし、リッチコンテンツとして消費者がいつでも見られる状態にしておくことが求められるのではないかと思います。
乃村さん
「消費者が何を求めているか」については、徹底的にエンドユーザーのことを考えることが大切だと感じています。先日行ったあるキャンペーンに、4日間で約10万人もの方からエントリーをいただきました。この企画を考えるにあたり、意識したのが、エンドユーザーが本質的に喜ぶサービスは何なのか?という点です。そこさえ押さえていれば、お客様は自然と増えてくると感じています。
もう一つ、デジタル化が進んだことで、情報をストックすることの重要性が高まりました。SNSの普及により、情報を外部のサービスにストックする流れが加速しましたが、一方で住宅会社が発信する情報は、フロー型の情報として消費し続けられているのが現状です。やはり、伸びている工務店は、発信した広告や施工事例などをストックすることで、情報資産にできているという共通点が見られます。デジタル化が進んだことで、会社ごとの強みがコモディティ化するスピードが早まりました。そのような中で、強みを長持ちさせるためには、エンドユーザーが求める情報を、いつでもどこでも再検索可能な状態にしておくことが、必要不可欠だと感じています。
住宅業界に求められる変化とは
コロナ禍における消費者ニーズの変化や、住宅業界が抱える課題が見えてきたところで、最後に「住宅業界の未来」について意見を出し合いました。7名から伝えられたのは「住宅業界の新しい未来を創造するためには『学び続けること』と『変化を柔軟に取り入れていくこと』が必要」というものでした。
乃村さん
アフターコロナの働き方で言うと、住宅業界はFace to Faceがメインに戻るのではないかと予測しています。意見を交わす程度の簡単なコミュニケーションのデジタル化は進むと思いますが、人との繋がりが強く求められる「働く」という行為においては、現場で意見を交わせた方が、業務の改善スピードが圧倒的に早いからです。ただし、人間関係が伴うようなリレーション部分でFace to Faceが強いというのは、今後も変わらないと思います。
鎌田さん
働き方については、オフライン寄りのハイブリッドが一番適正かなという感覚を持っています。単純なコミュニケーションはオンラインでも問題ないのですが、言葉の背後にあるものまで掴むのは難しいと感じる場面があるためです。お客様とのコミュニケーションにおいては、オンラインを活用したことで接触頻度を2倍に増やすことができました。そういったオンラインの強みをしっかり活かしていくことが、今後より大切になるのではないかと思います。
荒川さん
今までは、同じ職場にいても忙しそうだから話しかけづらいという場面があったのですが、オンラインで打ち合わせするようになったことで、以前より気軽に相談ができるようになったという声も聞かれます。また、外部との打ち合わせもオンラインが増えたため、移動時間がかからなくなった分、コミュニケーションの総量を増やすことができました。これこそが、リモートワークが進んだことの1番のメリットではないかと感じています。
高重さん
皆さんが話しているように、働き方が多様化していくことはもちろんですが、今後も多様化を加速し続けることが最重要です。一人ひとりの価値観や考え方が違うことを前提として、どういったサプライチェーンを構築するか、情報の設計をしていくかにチャンスが潜んでいるのではないかと感じています。同じ業界でも、サプライチェーンが全く同じである必要はなく、多様化する消費者に対してリーチできるチャネルをインターネット上に持ったうえで、ターゲット層に情報を届けるために最適化していくことが、今後5年から10年で必要になるのではないでしょうか。
友安さん
「集積を多く取った者が勝つ」と考えています。今までオフィスは「働く場」に過ぎませんでしたが、今後は「人が会う場所」と定義し直すことで、「集積を作る場所」を握っていくことが大切になるのではないかと感じています。
林さん
今後は、より一層「ビジョンの話をする」ことを意識する必要があると思います。打ち合わせの場面で、手法やテクニックの話ばかりになっていることが多いのではないでしょうか。それは単に入り口にしか過ぎないため、世界観やビジョンを共有していくことを大切にしていただきたいと感じています。そのためには、傾向と対策を知ることが大切です。出荷された製品を分解・解析することによって、原理や構造を明らかにする「リバースエンジニアリング」という言葉がありますが、違う業界や他社のサービスをリバースエンジニアリングすることで、自社のサービスに落とし込んでいこうとする姿勢が、今後最も重要だと感じます。
加賀爪さん
先日、新型のiPhone13が発表されましたが、振り返るとiPhoneが誕生したのはほんの十数年前のことです。iPhoneの登場で私たちのライフスタイルが一変したのと同じように、今後数年でさらに大きな変革が訪れるのではないかということを、ひしひしと感じています。「他社は色々やっているけど、うちには関係ない」ではなく、常に学びを止めず、新しい未来を創造していきたいなと改めて感じました。
まとめ
今回のトークセッションを通して、約1年半前から議論を重ねてきたデジタル化と消費者ニーズの変化についての予測が、現実のものとなってきたことを実感することができました。急激な変化の波に取り残されないためには、変化を前向きに捉え、多様化する消費者のニーズに応じた対応を取っていく必要があります。「オンライン上で家を購入する」という未来が、現実となる日もそう遠くはないかもしれないですね。私たちも、常に学び、挑戦し続けることで、変化に対応するためのヒントを探っていきたいと思います。住宅プレイヤーが一丸となり、今まで見たことのない「住宅業界の新しい未来」を創造していきましょう。
株式会社ダンドリワーク
「現場とともに、走る鳥」のスローガンのもと、建築現場の施工管理アプリ「ダンドリワーク」やマンション工事の予約管理アプリ「ITENE(イテネ)」を提供。
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ルームクリップ株式会社
ユーザーが投稿した家の実例写真を中心とした、日本最大級の住まいと暮らし・ライフスタイルのSNS「RoomClip」を運営。
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一般ユーザーに向けた内装建材や家具パーツを販売するオンラインショップ「toolbox」を運営し、中古マンションやオフィスのリノベーションを手がける。
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家づくりでくらしの想いをカタチにするところから引き渡しのあとまで、ずっと一緒に寄り添うマイホームのアプリ「マイホム」を展開。
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「中古仲介+リノベーション」のワンストップサービス市場シェアNO.1*の「リノベ不動産」を運営するなど、ITとリアルを融合した中古住宅プラットフォーム事業を展開する。
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スピーカー紹介
株式会社ダンドリワーク 代表取締役 加賀爪 宏介
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ルームクリップ株式会社 代表取締役 高重 正彦
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株式会社TOOLBOX 代表取締役 荒川 公良
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株式会社myhm CEO 乃村 一政
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株式会社WAKUWAKU 代表取締役 鎌田 友和
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株式会社友安製作所 代表取締役社長 友安 啓則
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BETSUDAI Inc. TOKYO CEO 林 哲平
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