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“暮らし方提案”と魅力的なプロダクトで、住宅業界の認識を塗り替える。|新建新聞社 三浦氏×CEO 林 対談

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新建新聞社社長 新建ハウジング発行人

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LIFE LABEL / Dolive主宰

LIFE LABEL / Dolive主宰

これからの住宅業界に必要なのは、ユーザーに気付きを与える「ライフスタイル」提案。

三浦:私から見た林さんのイメージは、ずっと住宅業界の“当たり前”に異を唱え続けている存在。LIFE LABELも、家を「暮らしを楽しむための舞台」として定義しましたよね。「義務感で買うもの」「必要になったから買うもの」といった従来の家に、エンターテインメントという新しい概念を持ち込んできた。それが新鮮だなと思っていました。

林:たしかに、振り返ってみると10年以上事業をやってきて、やはりライフスタイルの提案は欠かせない要素だったなと思いますね。そこの軸がぶれることはありませんでした。

三浦:今でこそライフスタイル提案を行う住宅会社も増えつつありますが、その先駆けでもあるかもしれないですね。しかも、LIFE LABELがすごいのが、実際に住宅プロダクトに落とし込んだり、その思想を広めるためにブランドをメディア化したり、思想を具体化しているところ。ライフスタイル提案を謳う住宅会社も数多あれど、ここまで徹底しているところはないんじゃないですかね。

林:僕たちは、どうしたら生活者に家を楽しく、ワクワク暮らせる場所にしたいと思ってもらえるか。そのことばかり考えてきました。現状の到達点として考えているのが“リファレンス”の重要性です。たとえば、かっこいい住宅プロダクトや素敵な暮らし方に出会うことができれば、「自分もこんな家に住みたい・こんなライフスタイルを送りたい」と、気づけるかもしれない。そのために、LIFE LABELではさまざまな“リファレンス”を用意してきました。住宅商品の開発やコラボレーション、メディアでの情報発信など。すべてはユーザーのみなさんが、自分にとって本当に住みたい家に気づいてもらうための素材なんです。

三浦:これからの住宅業界で大切なのは、パーセプションチェンジ、つまり顧客意識の変化を促す戦略です。住宅業界では従来「性能」や「コスパ」が重視されてきた。でも、それらは、あくまで表層的なものに過ぎない。最も大切なのは、生活者への「暮らし方の提案」と「プロダクトの魅力」なんです。そこの“認識”を塗り替えていく必要はありますよね。

林:最初から、僕も「コスパ」を強みにするつもりはありませんでしたから。たしかにLIFE LABELの主力商品でもあるZERO-CUBEは、ローコスト住宅だと言われることもあります。でも、それはあくまで数ある選択肢のひとつ。「ローコスト住宅で勝負したいから、LIFE LABELを導入する」という考えは、僕らが求める方向性ではないかもしれないですね。

林:僕自身、これまで700以上の工務店に関わってきました。その中で、地元で根強い支持を集めている工務店には、ひとつの傾向があるんです。それが、施主によって自発的にSNSで工務店や住宅プロダクトを紹介されていること。たとえば、Instagramで「#〇〇工務店」「#〇〇な家」などとハッシュタグを付けて投稿されているのが良い例です。これって誰かに強制されたわけじゃないんですよね。あくまで「こんなおしゃれな暮らしをみんなに見てほしい」「この感動を誰かに教えたい・伝えたい」と思うまで気持ちが高まった結果だから。もし「コスパ」を重視したり、デザインに妥協したりした家に住んでいたら、こうした現象って生まれないと思うんです。

三浦:たしかに「家を建てる」が目的になってしまうと、「安い方がいい」「性能が高い方がいい」といった動機に流れやすくなってしまいますからね。でも、それでは家を建てた後の暮らしまで見つめていないことになる。その結果、建てた後に“誇れない家”になってしまうという。やはり、あくまで家は「暮らしを楽しむための舞台」として考えることが重要そうです。

“ワクワクする暮らし”の実現には、優れたデザインが必要

三浦:LIFE LABELの取り組みとして、やっぱり特徴的なのが異業種とのコラボ規格住宅ですよね。ライフスタイル誌「POPEYE」、家電ブランド「amadana」、インテリアブランドでは「IDÉE」など数々のブランドと住宅商品を開発してきました。なぜLIFE LABELでは、コラボレーションを重視してきたんですか?

林:僕はデザイナーではありません。そんな僕がいかに暮らし方を提案するか、いかに魅力的な住宅プロダクトをつくるかを考えたとき、コラボレーションは必然的に生まれる手段だったと思っています。

三浦:コラボレーション先はどのように選んでいるんですか?

林:シンプルに「おしゃれ」であることは絶対ですよね。そもそも私たちの発想の根源にあるのは、エンターテインメント。いかに「こんな家に住みたい!」「こんな暮らし方がしたい!」というワクワクする感情を抱かせるかにこだわっています。そのことを実現するために必要なのは、やはりデザイン。優れたデザインは、生活者の心を惹きつけ、暮らした後の世界をワクワクとイメージさせます。そんな住宅プロダクトをかたちにするために、やはり「おしゃれ」であることは欠かせない要素なんです。

三浦:「ブランドのファンが商品を購入してくれたらいいな」といった集客目的ではなかった。

林:はい。コラボ先のブランドはあくまで“リファレンス”のひとつになればいいと思っています。さらに「こういう家に住めば、こんな毎日を送ることができる」といった魅力的な提案をいくつも用意しておく。そうして住宅のセレクトショップのような存在になれたらいいなと考えています。それがひいては「こんなデザインがあるんだ」「こんな家に住んでみたい」といった生活者への気づきを与えることになると信じています。

「どんなかたちにするか」「何を貼るか」が住宅デザインを決める

三浦:
でも、人々の心を惹きつけるような優れたデザインをかたちにするのって簡単ではありませんよね。実際、LIFE LABELでは、どのように住宅商品開発を進めているんですか?

林:
これまでの住宅業界だと、家づくりといえば、まず間取りから考えますよね。でも、LIFE LABELはそうじゃない。僕は“テクスチャ”と表現しているんですが、住宅のデザインって、結局「どんなかたちにするか」と「何を貼るか」でしかないと思っています。遠くから自分の家を見て良いと思えるか、家の中にいて良いと思えるか。それは、「どんなかたちにするか」「何を貼るか」で決まっていくはずです。

三浦:
おもしろいですね。林さんは、住宅をファッションの感覚で捉えている。

林:たしかに服の格好良さも、結局シルエットと柄で決まったりしますもんね。人の印象って、やっぱり「どんなかたちにするか」「何を貼るか」で左右されるんだと思います。そこをすっ飛ばして、いきなり細かいディティールを気にしたところで、人の心を惹きつけるものはつくれない。

三浦:そして、形や貼りものを考える際に、コラボレーションするブランドのエッセンスを加えていく、と。

林:そうですね。僕の場合、コラボレーションするブランドが持っているアイデンティティを国に当てはめて考えることが多いです。たとえば、FREAK’S STOREだったらネイティブアメリカンのイメージ、WTWだったら西海岸のイメージなど。そうすることで、目指すデザインのゴールが見えやすくなるんですよね。

家が「意識」や「習慣」を変える。HAPPY OUTSIDE BEAMSとつくった住宅「Sunny Track House」に込めた狙い

三浦:2023年5月には、全国でセレクトショップを展開するBEAMSのプロジェクト「HAPPY OUTSIDE BEAMS」がプロデュースした規格住宅「Sunny Track House produced by HAPPY OUTSIDE BEAMS(以下、Sunny Track House)」を発表されましたよね。このプロジェクトは、どのようにしてスタートしたんですか?

林:もともとBEAMSのスタッフの方々とは交流があったんですよ。いつか一緒に何かしたいと話していた中で、「HAPPY OUTSIDE BEAMS」を紹介してもらって。そのコンセプトでもある「“外遊び”を全力で楽しむ」というメッセージにすごく共感したんですよね。暮らしを全力で楽しむことを重視しているLIFE LABELとも親和性が高い。そんな背景もあって、2021年頃からプロジェクトを進めていました。


三浦:数あるブランドやセレクトショップがある中で、HAPPY OUTSIDE BEAMSと一緒に取り組むのは、どんな狙いや理由があったんですか?

林:BEAMSは、特定の層に深く刺さるハイブランドではなく、あまねく人をかっこよくするセレクトショップであることが大きくて。尖ったデザインのハイブランドはたしかにかっこいいし僕も大好きなんですけど、似合う人を選ぶじゃないですか。でも、BEAMSには、ドレッシーな服が好きな人が満足できるファッションもあれば、小柄な人をかわいくしたり、大柄の人をかっこよくしたりするファッションもある。要するに、誰でもおしゃれにしてくれるんです。でも、それってLIFE LABELが目指す家づくりの思想と共通しているんですよね。それぞれの理想のライフスタイルを、BEAMSは「ファッション」で、LIFE LABELは「家」で、実現する。
しかも、HAPPY OUTSIDE BEAMSは、数あるBEAMSのレーベルを横断したプロジェクト。だからこそ、ひとつのレーベルのカラーにとらわれることなく懐の広い提案ができます。それも大きかったですね。

三浦: 先ほど林さんが言われた通りHAPPY OUTSIDE BEAMSのコンセプトは“外遊び”ですよね。今回のSunny Track Houseも、“外遊び”を楽しむ家になっているってことですか?

林:はい。でも、単に山や川に出かけるアウトドア好きのための家ではありません。あくまでここは、“外遊び”の拠点。そのために、アウトサイドとインサイドの境目を曖昧にしたアウトサイドリビングという中間領域をつくって、“外遊び”の感覚を家の中でも楽しめるようにしました。ここでBBQをしてもいい、ただ日光浴しているだけでもいい。家の中にいても“外遊び”ってできるんですよ。

三浦:きっとSunny Track Houseにとって、“外遊び”って一般的な“アウトドア”と違って、もっと広い概念なんでしょうね。たしかにアウトサイドリビングには、十分な広さがあるから、さまざまな”外遊び”ができそうです。

林:そうですね。あとは、家に長く住んでいると、庭とかベランダの屋外空間ってだんだん使わなくなってくるじゃないですか。でも、今回はアウトサイドリビングとして家の中心に据えた。そうすることで、“外遊び”を意識させることができるんです。結局、そこに住むのはユーザーたち。僕たちができるのは、場所にメッセージを込めて意識させることだけですから。

三浦:その視点って本当に大切だと思います。「家」というハードで人の意識や習慣って変わる。何か場所があると自然と「ここでは、こういうことができそう」という発想が広がりますよね。家づくりに携わるものとして、そのイマジネーションを刺激することは意識的に取り組んだ方がいいかもしれませんね。

林:繰り返しになりますが、僕たちにとって、家は「暮らしを楽しむための舞台」。ある意味、Sunny Track Houseは、その思想を体現する集大成の取り組みと言ってもいいでしょう。この住宅プロダクトを機に、私たちの思想と共鳴するプレイヤーが住宅業界に増えていったらいいなと思いますね。