マーケティングを極める理由は、めんどくさがり屋にあり?
introduction
「林P(はやぴ)の脳内探検」は、LDPの代表やプロデューサーとしての林哲平の頭の中を探検しちゃう企画。
今でこそ住宅業界のパイオニアとしてヒット商品を生み出し続けていますが、そこに至ったきっかけや経緯とは…。スタッフでさえも理解不能?!林哲平を徹底解剖いたします。
第3回目は、これまでとひと味変えて、住宅業界の「当たり前」にプロデューサー的視点で鋭く切り込みます。
〈これまでの記事はコチラ〉
・その1 LDP代表「林哲平」プロデューサー脳誕生のきっかけとは!?
・その2 ロジックよりも大切なのは “熱量”とトガった情報量
今回は現在のLDPにつながる話を訊いていきたいのですが、かつて広告代理店時代に映画やアパレル業界とも関わりがありましたよね。そんな業界と住宅業界の違いは感じましたか?
イメージできないのは、何か理由があるんですかね?
林P
正直住宅業界は広報とかPRなどのレベルが高いわけではない。
どうして高額商品を扱っていて売り上げも大きいのに、マーケティングに注力しないんだろう?と思いました。
スキルだけじゃなくて、感性的なものも含めて他業界との差異を感じますね。
感性的なもの・・・
林さんが考える、住宅におけるマーケティングの「感性」ってどんな部分ですか?
林P
よくお客さまアンケートで「あなたはなんで来場されましたか?」とか、「なんでこの服を買ったんですか?」とか「なんであのマグカップを選んだんですか?」という質問に対して、「セールだったから」「デザインが気に入ったから」「誰かがおすすめしてたから」など、いろんな回答が飛び出しますよね。
つまり、わたしたちがモノを選び、購入する理由は1つだけじゃないってこと。たくさんの曖昧な理由が重なって、行動につながるんです。
ファッション業界はコスパが良いからといって、ダサい商品を売ることはないですよね。なぜなら動機や理由が曖昧な「何か」を大切にしてるからです。住宅業界も、お客さんの心理や行動にもっとしっかり向き合うべきだと思います。
確かに住宅業界では「当たり前」だとされていることが、他の業界ではおかしいよねって思うところもありますね。
林P
この話の発端は、建築を学ぼうとする若者がいる日本の教育現場になるんですよ。
構造や施工、アトリエ系建築…それらを学んでも、ほとんどの学生は、自分が希望するアトリエ建築事務所に入れないんですよね。
え?そんなに厳しい世界なんですか?
林P
地元の工務店に就職したとして、30坪の家を設計するというお題があっても、そんな条件で学生時代に課題に取り組んだ経験が少ないからできない。会社の先輩たちが今までつくってきた建売とか注文住宅のデータを真似するくらいしか手段がないんですよね。
前に、建築家の谷尻誠さんと「建築を志す若者が学ばなきゃいけないことは、実はエンターテインメントやマーケティングじゃない?」って話したことがあって。
高校や大学の授業で1単位でもいいから業界マーケティングの授業やビジネスに役立つ授業があるといいですよね。
「これからの住宅業界が考えるべき顧客視点について」とか。僕が講師してもいいですよ(笑)
エンターテインメントやマーケティングの先にあるものが建築でも広告、ファッションでもいいんです。どの業界でも通用するスキルなので。
なるほど…エンターテインメントと専門的な分野のバランスが大切ですね。
林P
そうですね。住宅に限らず日本の大手メーカーは、商流さえ確立すればいい、たくさん雇用すればいい、もっとお金が回るような状況にすることを考えてきたと思います。でも、経済的にも成熟期を迎える中、大手メーカーの考え方も多様になって、柔軟になってきていると感じます。だけど、クルマ業界と住宅業界は相変わらず既存の価値観に囚われている気がしますね。
それはどうしてなんですか?
林P
例えばとてつもない性能の日本車が誕生したとします。どこを走っても壊れませんよって言われても、めちゃくちゃダサかったら買わないですよね?
性能としては抜群ですが、デザインがかっこよくないんですよ。
だからデザインリテラシーが高い人は、機能性だけでなく、デザインも魅力的な外車に流れてしまう。バランス感覚が欠如してるんです。
若い女性をターゲットにしたクルマなら、企業の重役たちが決めるのではなく、若い女性たちに責任・決定権を持たせて「それかわいくない」、「これなら乗りたい」ってアイデアを集める方が、絶対ヒットすると思いますよ。きっと住宅でも同じことが言えると思います。
なるほど〜…たしかにターゲットに近い感性は大事ですよね。
プロデューサーとしてバランスを考えつつ、いろんな方向から考えるのは大変じゃないですか?
林P
自分なりにマーケティングを極めようとする理由は、結局面倒くさがりだからかもしれません。
1日2時間以上集中するなんて絶対できないから、ダラダラ、グズグズせず短時間でやりたい。集中すべき時にパッとやれるような準備をすることを心がけてます。
目的やコンセプトを持たずに手応えのないアプローチを繰り返すなんて成果も期待できないし、面倒なことも多くなる。
マーケティングの視点をちゃんと持ちながら具体的に施策を考えたほうが、効率的かつ効果的だと思うんです。 僕がやってることがすべて正解ですって言うつもりもないけど、自分が届ける商品やサービスに嘘は絶対につきたくない。その気持ちは強いですね。
林Pが大切にする独特なバランス感覚、マーケティング感性など、まさに脳内を猛スピードで駆け巡るようなフレーズ連発でお送りしてきた林Pの脳内探検。次回は、LIFE LABELの誕生秘話をメインに、コラボレーションの極意や広告に対するアプローチなど、ここだけのエピソードが満載です。
あくまでも僕の感覚なんですけど、住宅業界はオシャレじゃないですよ。オシャレだなと感じる家も少ない。
当時、全国のパートナー企業を訪ねても、面白いアイデアを考えていたり、エンドユーザーが好むような情報を持ってる企業はあまりなかったですね。だから「この先、どうしていく?」みたいなことをイメージできていない気がしました。