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「プロ施主=面倒」は早とちり! 施工主も強みを持ち、ストーリーが想像できるライフスタイル提案を。

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田村さんプロフィール

広告会社で約5年間働いたのち、LDPにジョイン。広報宣伝チームにて、各住宅商品のプロモーションや新商品開発を担当したのち、営業事業部のマネージャーに。
総合広告代理店で培った知見を生かして、ブランドに関わる各プロジェクトを横断したディレクション業務を行いつつ、延べ500社以上の経営層とのセッションから得た経験値を武器に、さまざまなケースの経営課題に対してコンサルテーションを行う。

プロ施主とはどんな存在?なぜ逆転現象が起きるのか?

プロ施主とは読んで字のごとく、プロのような施主。工務店向け住宅専門紙「新建ハウジング」を発行する、新建新聞社の三浦祐成社長がこの言葉を使ったことにより、業界で一躍トレンドワードになりました。家づくりに関する知識がプロ並み(あるいはプロ以上)に豊富で、SNSなどを駆使した情報発信が得意な施主を指しています。

出自の背景にあるのは、インターネットの発展。家づくりに熱中するとともにマニアックな情報までも深掘りしていく中で、プロ顔負けの知識を身に付ける施主が増えているのです。

かつては専門的な情報を簡単に得る術がありませんでした。そのため、施主は建てる土地が決まってから、できる範囲で家に関する勉強をするケースが一般的。いわば建築リテラシーを高められないため、工務店などに言われた中で家をつくるしかない売り手主導の業界だったのです。

それがやがて、ネット上にも専門的な情報が蓄積される世の中に。こだわりの家を建てた経験者と、施主がSNSなどでつながることもできるようになりました。同時に世間では趣向の多様化も進んでおり、施主は自らの好きなデザインやジャンルに集中してリテラシーを積んでいきます。

そうして知識を蓄えたプロ施主が、いざ工務店などと対峙するとどうなるか。工務店は家づくりを生業にしているとはいえ、営業担当者が携わるのは多くても年間10棟程度。しかも手掛けた住宅はデザインやジャンルがバラバラだったりするので、基本的な知識はあっても、ひとつのジャンルを深く知っているとまではなかなかいきません。

このような背景から、プロ施主のほうが工務店より詳しいという逆転現象が生まれるのです。そしてネットを介した情報社会はこれからも進化し、一方で人々の趣向もより多様化していきます。

では、彼らプロ施主に対して住宅業界はどんなアプローチをしていけば良いのでしょうか。

重要なのは、プロ施主に寄り添って強みを持つこと

こだわりが強いプロ施主は、工務店にとって面倒な存在だと思うかもしれませんが、決してそんなことはありません。

確かに、こだわりが少ない施主のほうが打ち合わせの回数が少なく済むなど、お店にとってはある種「手間がかからない」存在かもしれません。しかし専門的な情報へのアクセスはいっそう容易になるでしょうから、今後はプロ施主とまではいかなくとも、お客様の建築リテラシーは高まっていくはず。極端な話、何も対策をしなければ他社に顧客を奪われ、機会損失してしまうのです。

大切なことは、知識が豊富な施主を遠ざけるのではなく、工務店も情報をアップデートしつつ、彼らに寄り添って強みを持つこと。例えば断熱だったり、構造や耐震だったり。一方でデザインは苦手だったとしても、そこは外部で得意な設計士を入れるなどしてフォローすれば、施主の思いに応えられると思います。

また、消費者のライフスタイルに着目することも大切です。たとえばクルマを中心とした生活だったり、アメリカ西海岸系やサーフィンだったり、アウトドアだったり、北欧系だったり。そういったライフスタイルに特化した家づくりが得意というブランディングをすれば、コンセプトに合った施主が依頼してくれるでしょうし、施工主と施主の共感による理想的な住まいがつくれるでしょう。

プロ施主の表面だけにフォーカスすると一見面倒に思えるかもしれませんが、味方になれれば良顧客なのです。

ストーリーの提案力や共感力も大切

プロ施主とよりよい商談を進めていくには、暮らしを想像できるストーリー提案が大切です。ライフスタイルに関しては、提案力だけでなく共感力も大切になってくるでしょう。社員の趣向にも目を向けて、会社がウリとするジャンルに詳しい人材であれば、その特色を生かすことがおすすめです。採用に関しても同様ですね。

もしも会社でひとつのジャンルに縛るのが厳しいのであれば、社員ごとに得意分野を設定するべきです。クルマならこのスタッフで、北欧系ならこのスタッフにお任せくださいといった形で提案できるといいですね。

デザインが不得意な場合は外部の設計士を、と前述しましたが、これからは分業するケースも増えていくと思います。構造など躯体の部分は自社でしっかり行い、意匠に関する部分はデザインが得意なプロに任せる。

そのうえで、プロ施主が思い描くイメージを理解するのが難しかったり、わからなくなったりすることもあると思います。そこで大事なのが、両者がイメージできる場を作ること。例えば弊社では家のデザインをシミュレーションできるアプリを作り、コミュニケーションがスムーズにいくようにしています。

クルマ好きな施主がおもむろに「外壁を○○風にしたい」と依頼してきた時に、ぼんやりとした「○○風」を具現化して色や柄などを試せると話が早いですよね。「シミュレーションアプリ」があれば、施主も作り手もあらかじめアプリでデザインのイメージを可視化して、コミュニケーションが取れるのです。「言ったことが伝わらない」というストレスもないですし、作り手も分かりやすいのでズレもありません。営業担当が設計士に施主の希望を伝える際にも、同様のことがいえます。

家づくりは最もクリエイティブであるべき

プロ施主でなくとも、施主のリテラシーがどんどん高まっていく一方で、住宅に関しては、建売住宅の需要が高まっていくと考えています。

今までの建売は安くて立地条件が良いことがメリットであり、デザインや暮らし方は、序列が低いお客様への提案が多かったと思います。しかし、どこまでも続くインフレなどで、時間とコストをかけて注文住宅を選んでいた客層も、条件さえよければ早く決めたいというニーズも出てきているのです。

加えて、建売住宅にもライフスタイル提案型が増えていくと思います。たとえば、「このロケーションにこのデザインで建てて、そこではこういう暮らしができますよ」というストーリーで提案したとしましょう。

すると、「この立地条件で、自分たちが好きなテイストのデザイン住宅が建売されている。少し相場より高くても、注文住宅で建てるより良いかもしれない!」と判断するユーザーが増え、新しい建売のあり方ができるのではないかと考えています。

一方で注文自宅では、「なんでもいいから提案して」という家づくりは少なくなっていくでしょう。

住宅はよく、人生で最も高価な買い物といわれます。であれば最もクリエイティブであるべきですし、そのためには施主が情報を蓄えていくのは当たり前。作り手側も面倒がらずにそれに応えていく必要があります。

今までは技術的なクリエイティブに寄りすぎていたけれど、これからは見た目のデザインだけでなく、暮らし方をもデザインしていく感性がより必要とされる時代になってくるのではないでしょうか。

情報があふれ施主のリテラシーが高まっていく一方、作り手が追い付いて学ばなければ仕事は来なくなってしまいます。自社で「これは負けない」という強みを持ち、そのジャンルの地域一番店を目指すのが、これからの住宅業界における勝ち方だと思います。

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