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コンセプト分譲はどう作る?アメリカンスタイルがテーマの「LIVES TOWN」の舞台裏
INDEX
introduction
今注目されるコンセプト分譲地。ただ分譲地を作るのではなく、デザインなどがコンセプチュアルな住宅で街づくりを行うと、ユーザーにとっても工務店にとってもメリットがあると注目されています。
こうしたコンセプトを持った分譲地は「ミニ分譲」と呼ばれる4区画からの小規模開発から大規模なものまであります。例えば静岡県静岡市の「オレンジストリート三保」や、新潟県三条市の「野きろの杜」など、販売中の計画も少なくありません。ではコンセプトを持った分譲地づくりに取り組む工務店は、どうやって開発をすすめているのか?今回は、福島県郡山市で「アメリカンスタイル」をテーマにした「LIVES TOWN」を手掛ける株式会社 LIVES代表、富永哲一さんにお話を伺いました。
「不安よりもワクワク」未経験でも分譲地を手がけた理由
LDP編集部:まずはLIVES TOWNを作ろうと思った理由から教えてください。
富永:一番は、コンセプティブな街づくりが私の夢だったからですね。背景には、家づくりは街づくりだという考えがあります。統一感のある住宅地がつくれたら、そこに住む方々も共通の価値観をもち、住まいを通じて仲のいいコミュニティが生まれるんじゃないかと思っていました。
これまでのお客様の声としても、「あの土地は気に入ってるけど、周りの建物とのデザインバランスを考えるとちょっと」という意見をいただくこともありましたし。さらに聞くと、できれば同年代で価値観が近い方と近所付き合いをしたいという声もありました。
街づくりの観点で影響を受けたのは、埼玉県入間市にあるジョンソンタウンです。あの街は元米軍ハウスという成り立ちからして特殊ですが、まるで別の国のような雰囲気ですよね。そしてアメリカンカルチャーを愛する人たちが集まって、自分たちらしい生活をしています。憧れる方々も多く、私もいつかこんな街づくりができたら面白いだろうなと、すごく参考になりました。
LDP編集部:LIVES TOWNは構想から実現までにどれくらいの期間がかかりましたか?
富永:もともとあの土地は田んぼだったんです。地主さんを紹介いただきお話を伺ったところ、もう農業はしないから手放したいということで、計画がスタートしました。そこから販売開始まで、約1年半ですね。いくつか他社からも購入希望があったようなのですが、当社が地元の企業であることがひとつの決め手だったとうかがっています。
加えて、他者との案分ではなくすべての土地を購入させていただきました。結果として15区画と、比較的大きめな分譲地となりましたが、私どもとしてはワクワクしており、最終的にはモデルハウスの完成から1年~1年半ぐらいで完売できたらと計画しています。
LDP編集部:では、リスクや心配事はそこまでなかったですか?
富永:心配よりも楽しさのほうが上回っていました。結果的に今回が15区画となりましたが、当社としては実は大小問わず分譲地の計画は初めてなんです。加えて、まだ大々的な告知もしていないのですが徐々に受注いただいていますし、非常に楽しみながらやらせていただいています。
コンセプトの決め手は、「周波数が合う」コミュニティが作れそうか
LDP編集部:LIVES TOWNはアメリカンスタイルがコンセプトとなっていますが、その理由を教えてください。
富永:私が子どものころから、車やバイクを中心にアメリカンカルチャーが好きだったという点が大きいですね。当社としても設立当時からアメリカ色を強く打ち出しており、一定の評価も得ています。今回のコンセプトに関しても、お客様のニーズに合致するという思いで決めました。
LDP編集部:LIVES TOWNを手掛けるにあたって、どんなことを大切にしましたか?
富永:周波数が合うお客様とお仕事をするということです。この周波数とは、たとえばその方の好きな家のスタイルや趣味が合うとか、共通の話題で盛り上がるとかですね。実はこれまでの経験上、今回のコンセプトである「アメリカンスタイル」が好きな方も周波数が似た方が多いなと感じていて。そういった方々が集まれば、いいコミュニティが生まれると思うんです。
逆の具体例を挙げるならば、住宅のデザインや街のコミュニティよりも立地に惹かれてLIVES TOWNに住みたいという方は、周波数が合わないお客様だということですね。お話を進める中で、建物のデザインは違うものにしたいというお客様の場合は、泣く泣くお断りをしたうえで、知り合いの工務店さんに紹介するなどの対応をしています。
富永:たとえば一棟だけコンセプトと違う家が建つことで全体バランスが崩れてしまい、他の施主様にとってはデメリットにもなりかねません。ただ、お客様の感覚も大事にしたいと思っており、内装や住設機器などはある程度自由ですし、お互いに提案しながら進める部分もあります。
LDP編集部:住宅以外に取り入れる、LIVES TOWN共通のデザインはありますか?
富永:たとえば門柱には花ブロックを使い、ポストと一体型になっているもので統一しようと予定しています。ほかには、敷地内の道路は私道になる形で各施主様が所有するんですけど、当社でも負担させていただき、道路に何かを描きたいと考えています。これは上空から見たときに、ひと目でLIVES TOWNだとわかる仕掛けのようなものですね。
あとは、各住まいの入口となるアスファルトの部分に区画番号を記すなど。今のところ、これらの意向に難色を示される声はないですね。住宅以外にはこうした意匠も取り入れて、街の雰囲気づくりをやっていきたいと考えています。
LDP編集部:価格面に関しては、これまでLIVESさんが手掛けた住宅と比べていかがでしょうか?
富永:土地も住宅も当社の販売となるので、お客様からすれば、同クラスの注文住宅に比べるとお求めやすくなっていると思います。一方で当社としましても、注文住宅よりも利益率は高くなります。
告知控えめでも問い合わせ続々!気になるお客さんの反応は?
LDP編集部:LIVES TOWNには御社の住宅のほか、Doliveの商品も採用いただきました。
富永:Doliveのデザインは、まさに私の好みです。たとえば「THE HOUSE GARAGE PROJECT」は、私のように車好きのお客様にとっては夢みたいな家ですから。また、郡山にはまだこのようなデザインの住宅が少なく、モデルハウスのような存在にできたらという考えもありました。
なお、お客様の選択肢としては、Doliveの商品をベースとして要望に合わせて変えられるスタイルとしています。
LDP編集部:現状、お客さんからの反響はいかがですか?
富永:おかげさまで徐々に受注いただいていますし、問い合わせも非常に多いですね。分譲地は初めてですが、これまでに手がけた案件と比べてもお客様からの反応は早いと思います。今は、ひと組様ずつ条件や資金面などのお話をうかがっている状況です。
LDP編集部:反応が良いのは嬉しいですね。告知にも力を入れているのでしょうか?
現状はご紹介やSNSを中心とした発信ですので、あえて広く告知はしていません。ですので、お客様の居住エリアも近郊の郡山市が中心です。ただ、15区画中の1区画がモデルハウスで、それが6月末ごろに完成し、オープンイベントも行う予定ですので、以後は告知も広範囲にしていこうと考えています。(写真は完成間近のモデルハウス)
富永:しばらくはモデルハウスを活用しながら、バーベキューだったり季節の行事だったり、定期的に賑やかなイベントを開催できればと。ゆくゆくはLIVES TOWNの施主様と、その近所の当社のお客様などが交流を重ねつつ、新規の方にも気軽に来ていただけるイベントにしたいと思っています。
分譲地もそこから生まれたコミュニティも、自社のブランディングに繋がる
LDP編集部:この分譲地を作ることで、自社のブランディングに繋げたいという狙いもありますか?
富永:そうですね。仮に、14区画が完売したとしましょう。モデルハウスを訪れた方々がLIVES TOWNに着いた時に、街並みを見ながら、こんなデザインが好きとか、こういう色使いが好きとかイメージできると思うんですよね。ご案内したお客様がLIVES TOWNに住まなかったとしても、こんな家に住みたいと思っていただければ、新しい繋がりができる可能性があると思うんです。
富永:それにLIVES TOWNの各住宅がお客様との会話のきっかけとなり、好みのデザインや趣味の話も聞いたりできますし。加えてその際、新規のお客様が住人の方とお話をする機会があれば、先輩としてのお話だけでなく仲の良い関係も構築されて、それこそ良いコミュニティが生まれるのではないかなと期待しています。
今回良い実例が作れたら、ゆくゆくは第2弾、第3弾と、次なるLIVES TOWNも実現したいと思っています。
「チャンスがあればコンセプト分譲にトライすべき」、その理由
LDP編集部:これからコンセプト分譲にトライしたいと思っている工務店さんに向けて、アドバイスをお願いします。
富永:当社が不動産業と宅地建物取引業宅建の免許を取得したのは、実は去年なんですね。そこから土地の事業もできるようにはなってはきたのですが、実は売買できる土地自体が非常に少ないことがわかりました。
あっても高い、あるいは形が悪い、狭いといったケースが多く、家を建てたくても土地がないという問題が少なくありません。当社は今回運よくタウン計画が進められたんですけど、土地が見つからないと建築へと進められませんよね。
そういったところで今感じているのは、一言でいえば“土地を制する者は建物を制す”という考え方です。いくらお客様から「家を建てたい」といわれても、「では土地を一緒に探しましょう」というところからのスタートであれば、余計に時間がかかってしまうでしょう。ですから、今後ミニ分譲やコンセプト分譲へのトライを考えている工務店さんは、チャンスがあれば思い切ってやったほうがいいと私は思いますね。
LDP編集部:ということは、不動産会社さんとの関係も大事だと思うのですが、いい関係を築くコツはありますか?
富永:不動産会社さんはもちろんですが、同業界以外における関係構築も重要だと感じます。旧友や地域とのつながりを大切にしたり、プライベートでの交友を築いたりと、日ごろから広く人脈づくりをしておくこと。シンプルですが、そこから紹介いただけることも少なくありませんからね。
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本稿掲載時はまだモデルハウスが完成前ながら、すでに15区画中5棟が売却済となっているLIVES TOWN。完成後はイベント開催やPRにも力を入れていくということで、今後の動向にも注目です。