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リフォームは工務店の新たな武器となるか?プロが語る、次世代型リフォーム市場における戦い方

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株式会社リフォーム産業新聞社 取締役

株式会社リフォーム産業新聞社 取締役

1980年生まれ。北海道函館市出身。大学卒業後に飲食店向け、不動産向け新聞社を経験後、2006年にリフォーム産業新聞社へ入社。編集部デスク、編集長を経て、2015年に報道部長に。2020年に取締役へ就任し現在に至る。

増加するリフォーム業への新規参入、その難しさとは

LDP編集部:「TRENDYYY部」のインタビュー時にリフォーム市場は堅調に推移しているとうかがいましたが、新築からリフォームへの参入は増えているのでしょうか?

福田:正確なデータがないので感覚値になりますが、微増にはなっているかと思います。背景としては、新築市場が厳しい中でリフォームを強化したり、今までのOB顧客を対象にリフォームを提案したりする動きがあるんですね。

LDP編集部:では、逆にリフォーム業者が新築事業に参入するケースは?

福田:こちらも増えていると思います。特に地方では2010年ごろから人口減少がより顕著になり、となるとマーケットシェアが維持できません。そこで、住宅事業自体をリフォームだけではなく、新築や不動産と絡めたほうがいいのではと考えるからです。とはいえ新築市場もレッドオーシャンですので、ますます市場は激化するでしょうね。

LDP編集部:リフォームと新築、ともにプレイヤーが増えているということは、それだけ競争も激しいということですね。

福田:まさにそうです。ですので、ともに新規プレイヤーはマーケットの中でどこを狙うかが重要かと思います。

たとえばリフォーム会社の中には、10万円以下の案件に消極的な企業は少なくありません。薄利多売はある意味非効率ですが、それを承知のうえで狙うという手はあるかと思います。ただ、新築事業者がリフォームをするとなると、リフォームのほうが低単価ですので勇気が要るでしょうけどね。

事実、リフォームへの参入は厳しいという話もよく聞きます。やはり新築のほうが利益を上げやすいですし、技術的な問題もありますね。リフォームは対象となる住宅の規模や構成などがケースバイケースで、施工内容も多岐にわたるので、対応力が必要になってくるんです。

加えて現場管理の問題もあります。新築の場合は営業と工務で担当を分けることが多いですが、リフォームは営業も工務もひとりでやる商習慣ですから、事業のやり方も違ってくるんですね。こうしたいくつかのハードルが、リフォーム業への参入を難しくしているといえるでしょう。

リフォーム業者の新築業参入を助ける?規格住宅の可能性

LDP編集部:リフォーム業者が新築業に参入する際に、規格住宅を使うことも一つの手だと考えています。その点についてはどう思いますか?

福田:リフォーム会社が新築業に参入するにも、1から注文住宅で事業を立ち上げるのはハードルが高いですよね。家を作るノウハウが必要ですし、リフォームより事業規模が大きいですから多大な人的リソースを割かねばなりません。
となると、注文住宅よりは規格住宅のほうが参入しやすいし現実的だと思います。加えて、リフォーム専業より新築住宅のほうが売り上げが高いので、その利益を求めて規格住宅を取り入れる会社は増えていくと思います。

福田:また、規格住宅にはデザイン面での魅力がありますし、そのブランド力を借りて販売しやすいというメリットもありますよね。リフォーム業者がその点に目を付けて新築業に参入するケースもあると思います。

LDP編集部:いずれにせよ、新築業に参入するには新たな人材を採用できるかどうかがカギを握りそうですね。

福田:はい。また別の考え方ですが、新築業を取り扱うことで会社のブランディングを強化できるので、採用しやすくなるというメリットも考えられます。

市場の進化が、消費者のマインドを変えていく

LDP編集部:前編で、市場としてのシェアは1割程度ながら、一次取得者層が購入した中古住宅のリフォームに可能性があることを教えていただきました。この層は多くが20~30代になるかと思いますが、若年層に向けた業界のトピックスで注目していることは?

福田:たとえばスタートアップの動きがあります。DXを活用して建築業の効率化に挑んだり、SDGs的な観点で建材の最適化を試みたり、これまでになかったイノベーションを起こそうとする企業が続々誕生しています。そして、これらスタートアップの多くは経営者も20~30代が中心。それこそ一次取得者のコア層と親和性も高く、注目といえるでしょう。

リフォーム・リノベーション業界にイノベーションを起こそうとする企業が増えている。

LDP編集部:まさに業界にイノベ―ションを起こそうとする動きもあるんですね。若年層を含めた、消費者側のリフォームに対するマインドを好転させていくにはどうしたらいいとお考えですか?

福田:業界全体の課題ですね。メーカーさん、事業者さん、流通さん、そして私たちメディアも。消費者への提案方法だけでも、できることはあると思います。たとえば窓ガラス。日本は海外に比べると、単板ガラスといわれる1枚ガラスがいまだ90%以上普及しており、断熱効果の高い複層ガラスへの転換が進んでいません。にもかかわらず、リフォーム会社の広告に占めるガラス交換提案の情報は少ないんです。

また、家電やガジェット類の需要が増える中でコンセントを増やしたいという声も伸びているのですが、コンセント増設のリフォームを積極提案する会社はそう多くありません。相変わらずリフォームの主役はキッチン、水回り、外壁塗装だったりするんです。

LDP編集部:その理由は、やはりお金にならないからでしょうか?

福田:はい。ひとつは効率や単価ですね。たとえば、ユニットバスのリフォームの動機で最も多いのは、壊れやすいドアの交換なのですが、ドアだけの交換を提案する会社は少ないんです。メーカーではドア単体で販売しているんですけどね。

ユニットバス全体のリフォームでは100万円以上するので、こちらは積極的にアピールする。しかし、ドア交換だけでは低単価なので消極的になるという構造です。もっと、細々したリフォームでも消費者の方々が気軽に相談できる環境が整えば、市場自体も活性化していくと思います。

その点で商売上手なのは、家電量販店さんだったりするんですね。昨今は細かいリフォームに対応する家電量販店さんもいらっしゃって、たとえば温水洗浄便座を販売する際に、最新型のトイレへのリフォームを提案するんですよ。

トイレは節水機能が進化しており、交換によって水道料金も下げられます。しかし消費者にはそういった情報が十分行き届いていませんから、「〇年で元が取れますよ」という提案によってトイレのリフォームがたくさん受注できると。

せっかく商機があるのに、買い手が知らないことで逃してしまったらもったいないですよね。もっと消費者に伝えていく工夫を、各社が行っていくことも市場の活性化には重要だと考えています。

LDP編集部:消費者に寄り添って、わかりやすく積極的にアピールしていくことですね。リフォームによって生活が良くなる、素敵な暮らしができると思ってもらえたら、それこそ若い世代のリフォームへの興味関心ももっと高まるような気がします。

福田:そうですね。もともと商習慣的にはBtoB色が強い業界なので、BtoCのCにあたるコンシューマーへの提案が慣れていないとは思うのですが、多様化、グローバル化していくとともに情報化社会に適応すべく、リフォーム業界も進化していくべきだと思います。

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やり方次第で、リフォームは新規参入でも勝ちパターンがあるということを教えてもらいました。福田さんには「TRENDYYY部」でもインタビューをしています。こちらもぜひ一読ください!

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