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魅力的なプロダクトを武器にする!工務店が民泊事業を成功させるコツ

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株式会社LDKプロジェクト 代表取締役

株式会社LDKプロジェクト 代表取締役

泊まるなら、ホテルよりも民泊?コロナ禍を経て注目が集まる民泊施設

ーーまず民泊の定義から教えてください。

生田さん:法令上の明確な定義はないんですが、基本的には住宅の全部もしくは一部を活用して、旅行者などに宿泊サービスを提供することを指すのが一般的です。ただ、注意しておきたいのは、「住宅宿泊事業法(通称:民泊新法)」「旅館業法」「特区民泊」といった3つの法律のうちのいずれかに則った許認可、もしくは届出が必要だということ。

民泊新法は建物の構造要件が緩やかだったり営業可能な地域が広かったりと開業のハードルが低い分、営業日数が「年間180日以内」と限られていたり、地域によっては上乗せ条例で「週末しか営業できない」などの条件が加わって収益を上げにくい。逆に、旅館業法は営業許可のハードルが高かったり、営業できる地域が限られていたり開業のハードルが高い分、営業日数や最低宿泊日数の制限がなく、収益を上げやすい。また、特区民泊は、開業ハードルが低く、営業の制限も少なくて収益も上げやすい一方で対象地域が非常に限られている。地域によって、展開できる「民泊」の形態が変わるので注意が必要です。

自治体などによって展開できる民泊の形はさまざま

ーーありがとうございます。次に民泊市場の変遷から教えてください。

生田さん:私の会社が民泊事業に進出したのは2015年頃。その頃からインバウンドの波がやってきて、宿泊施設の需要が急激に高まりました。2015年の外国人観光客はなんと約2000万弱。コロナ前の2019年に至っては3000万人以上にものぼります。そんな人数が押し寄せるとホテルや旅館は日々予約でいっぱい。そこで新たな宿泊施設の受け皿として民泊という形態が注目されるようになっていきました。
それだけの大きな需要があるので、初期投資がかかってもすぐに回収できます。私たちも内装からインテリアまでしっかりお金を掛けて作り込んだ民泊施設が、たった1,2ヶ月で回収できていましたから。

ーーそこまで勝算のあるビジネスだったんですね。

生田さん:でも、次第に状況が変わっていきました。「民泊は儲かる」と考えて新規参入する事業者が急増。その過程で「安かろう悪かろう」といった質の低い民泊施設も増えていったんです。そして、激しい価格競争が始まり、だんだんと淘汰されていくように。さらに、そんな状況の中、2020年からコロナ禍に入り、外国人観光客は激減。質の低い民泊施設は一掃されました。

観光客のパイが小さくなった状況では、「とにかく雨風をしのげればいい」「とにかく泊まれればいい」といった民泊施設は競争に勝てません。ホテル1室程度の広さの部屋を民泊として提供する場合、同じ広さであればサービスも充実していて清潔感もあるホテルをユーザーは選びますよね。それにホテルだったら、たくさんの部屋数が用意されているので単価を下げても部屋が埋まれば事業は回る。ほんの1,2軒で運営している民泊施設が、そんなホテルと価格競争をしても勝ち目がないのは明らかでした。

ーーコロナ禍が落ち着いてからはいかがでしょう?

生田さん:見方を変えれば、外国人観光客にも、国内の日本人観光客にも「ここに泊まりたい!」とわざわざ選んでもらえるだけの高いクオリティを持った民泊施設が残ったということ。コロナ禍が落ち着いて、また旅行需要が急速に復活しつつある今、そんな民泊施設はとても魅力的な選択肢として注目されています。実際に私たちがZ世代を対象に実施した調査でも、半数以上が「ホテルより民泊施設を希望する」と回答しているんです。その理由も「個性的な施設が多いから」といった回答が大半。かつての「安かろう悪かろう」といった民泊のイメージは一新されて、よりよい宿泊先の選択肢として認識されるようになっています。

コロナ禍を経て、日本人の利用客は増加傾向にある

五感を刺激する魅力的なプロダクトこそ、ユーザーに選ばれる鍵

ーーここからは、実際に民泊施設を運営する際のポイントやコツをお聞きできればと思います。選ばれる民泊施設をつくるためには、どういった点を意識すればいいのでしょうか?

生田さん:基本的に民泊施設の人気度合いは「立地×プロダクト」のかけ算で決まると言っていいでしょう。東京や大阪の都市部や人気テーマパークなど観光スポットに近い立地であれば大きな需要が見込めます。ただ、その分ホテルと競合しやすいので、だいたい100平米以上の広さを持ったゆったりとした空間で差別化するのが定石です。
また、最近注目されているのが、決して都市部でも観光スポットがある立地でもないけれど、その分、プロダクトの魅力を高めて施設自体を目的地にするケースです。

ーー具体的にどのようなケースなのでしょうか?

生田さん:たとえば、今はサウナを併設したり、森の中でグランピングができるようにしたりする民泊施設が人気です。大切なのは、五感を刺激すること。木造でできた家の手触り、こだわりのインテリアで彩られた空間、ホームベーカリーで焼いたパンの匂い……特別な感覚や時間を味わってもらうことで、「また来たいな」「誰かに教えたいな」と思ってもらえます。

ーーたしかに近年は「どこに行きたいか」よりも「どんな時間を過ごしたいか」といった滞在の中身を重視する人が増えている気がします。

生田さん:先ほど述べたZ世代を対象にした調査でも、宿泊先選びで重視することとして「周辺の施設」と答えたのはわずか30%程度。「コストパフォーマンス」に次いで「アットホーム感」「大人数で宿泊できる」「非日常感」といった回答が上位を占めているんです。
また、記憶に残る施設にするために、プロダクトの魅力を高めるのはもちろん、地域特性を踏まえたコンテンツを用意しておくとなおよいでしょう。たとえば、私たちの会社には、琵琶湖のすぐ近くで運営しているサウナ付きの民泊施設があるんですが、キックボードを置いておくことで琵琶湖を水風呂代わりに使ってもらうことができます。

LDKプロジェクトが運営する「IZA近江舞子」
サウナなどの施設が人気

ーーそれは魅力的なコンテンツですね!

生田さん:そんな特別な体験を味わうと「みんなにシェアしたい!」という感情が湧き上がって、SNSに投稿してもらえる。すると、その投稿を見た別の人がまた「この施設を訪ねたい!」と思って施設を訪れてくれる。そんなサイクルが回るようになるんです。動画が拡散されれば、言葉の壁を超えて海外の人に届くこともある。特にTikTokやInstagram、Youtubeなどの動画コンテンツが盛り上がっている今、“動画映え”するコンテンツを用意しておくことは重要だと思います。

家づくりの技術を活かして、強いコンセプトを持った民泊施設を

ーーもし工務店が民泊施設を手掛けるとしたら、どのようなことを意識したらよいでしょうか?

生田さん:実は工務店って、民泊施設を手掛ける上でとても大きな強みを持っているんですよ。先ほど言った通り、プロダクトの魅力が民泊施設における競争力の源泉。通常の不動産賃貸だと同じ立地と平米数であればそれほど家賃は上下しませんが、民泊施設の場合、同じ立地と平米数でもプロダクトの作り込み次第で、単価も稼働率も変わってくる。その結果、売上が2倍にも、3倍にもなるケースもあるんです。実際に私たちが手掛けた民泊施設では、内装をリノベーションしてインテリアにもこだわったら、それまで月間60万円だった売上が140万円にまで跳ね上がったこともありました。培ってきた家づくりの技術を存分に活かして、魅力的なプロダクトをつくることができるのは、工務店の大きな強みだと思います。

ーーなるほど。例えばDoliveにはガレージライフを前面に押し出したGORDON MILLERとのコラボレーション住宅「THE HOUSE GARAGE PROJECT」があります。こうした独自のコンセプトを持った商品は、「プロダクトの魅力」につながりそうですね。

生田さん:強いコンセプトを持ってデザインされた施設は、特定の層に刺さりやすくなっていいと思いますね。「THE HOUSE GARAGE PROJECT」のようなプロダクトを使って民泊施設をつくれば、アウトドア好きな人はきっと行きたくなると思うんです。

THE HOUSE GARAGE PROJECT

ーーまさに施設自体が目的地化する。

生田さん:はい。魅力的なプロダクトをつくる際に、LIFE LABALやDoliveなどの強いコンセプトや高いデザイン性を持った規格住宅商品は、非常に力になります。もし「自分たちでコンセプトやデザインを考えるのは得意ではない……」「人気ブランドなどのお墨付きがほしい」といった考えを持たれている場合は、ユーザーからの知名度や信頼がある規格住宅商品の導入も有力な選択肢として考えてもよいでしょう。

魅力ある民泊施設を作るにはプロダクトが重要

生田さん:欲を言えば、魅力的なプロダクトを敷地内にいくつか並べたり、写真映えを意識したインテリアを用意できるとなお良し。棟建っているよりも5棟建っていた方が、施設としてのインパクトが高まりますし、キャパシティも口コミの拡散力も5倍になります。また、空間を広く見せるためにダイニングテーブルの角度を重視したり、明るいトーンのインテリアに統一したりするだけでユーザーの印象も変わります。結果的に、売上にも、集客にも、いい効果が生まれると思うんです。

宿泊施設自体を目的地化する

ーー最後に、今後の民泊市場の展望について教えてください。

生田さん:今後、民泊市場はますます伸びていくと思います。インバウンドが回復して外国人観光客が増えていますし、円安などの影響で海外旅行を控えるようになった分、国内旅行にシフトする日本人が増えています。実はコロナ禍が落ち着いてきてから、宿泊施設の稼働率はずっと高い水準を維持しているんです。
さらに、宿泊施設に求めるニーズも年々変わりつつある。これまでの旅行はテーマパークや観光スポットに訪れることが目的で、宿泊施設はあくまで旅行の付帯的な立ち位置でした。でも、今は宿泊施設で過ごす時間自体が観光の目的になることも多い。広くて大人数でも宿泊できるし、チェックインやチェックアウトの手間も少ないし、個性的な空間に出会うこともできる……観光客が求めるものに応えられる「民泊」は、目が離せないビジネスになると思います。