Share

高まるリフォーム熱、この先どうなる?リフォーム産業新聞社・福田善紀氏に聞いた、業界トレンドと未来

thumbnail

INDEX

IMG_1821

株式会社リフォーム産業新聞社 取締役

株式会社リフォーム産業新聞社 取締役

1980年生まれ。北海道函館市出身。大学卒業後に飲食店向け、不動産向け新聞社を経験後、2006年にリフォーム産業新聞社へ入社。編集部デスク、編集長を経て、2015年に報道部長に。2020年に取締役へ就任し現在に至る。

リフォーム市場は好調に推移。背景にあるのは、住宅への関心の高まり

LDP編集部:まずはリフォームやリノベーションの現状から教えてください。近年の市場データを見ると伸長しているようですが、実際はどうなのでしょうか?

福田:おっしゃる通り、マーケットは堅調に推移しています。コロナ禍前後について触れますと、2020年の市場規模は6.5兆円。コロナ前の2019年も6.5兆円でしたから、横ばいでした。2020年は当初、マーケットは停滞していたのですが、それは数カ月のみででした。春からコロナが流行り始め、ステイホームとなり、住まいの環境改善にお金をかけるマインドが生まれたのだろうと考えています。参考としては、特別定額給付金の10万円をリフォームに使った方が多かったというデータもありますから。

では翌年。2021年はどうだったかというと、こちらは6.9兆円とさらに伸長しました。背景はやはり2020年同様、コロナ禍によるリフォームへの需要増です。より深層に迫ると、予想以上にコロナが長期化したため、リフォームへの消費マインドが続くと同時に加熱もしたと考えられます。

LDP編集部:コロナの長期化を見据え、より本腰を入れてリフォームしようと考える人が増えたということですか?

福田:はい。具体例を挙げますと、2020年は家具の市場が飛躍的に伸びました。家具の新調や買い替えは、リフォームほど大規模じゃないですよね。これは、当初1年程度での収束を予想していたので、ひとまずのテレワーク対策や模様替え程度のものだったと思うんです。

ただ、「どうやら長引きそうだぞ?」という風潮になりましたよね。コロナの長期化は引き続き自粛することを意味しますから、在宅ワークも続くならそれなりのリフォームをしようと考える人も増えたのではないでしょうか。また、旅行や外食などに使うはずだったお金や時間を、より大規模なリフォームに充てたとも考えられます。

また、2021年は在宅ワークされる方が増えたことで、賃貸から新築住宅への住み替え需要も動きました。新築住宅であれば、自宅で働きやすい環境を作りやすいですからね。加えて、中古住宅を購入してリフォームをする需要も生まれ、市場全体も伸びました。

そして2022年。若干落ちますが、これはやはり、2021年が好調すぎたからです。過去をさかのぼると7兆円を超えた年もありますが、2021年の6.9兆円という金額はリフォーム市場の中でも最大級に近い規模です。

LDP編集部:2023年はまだ折り返し地点ですが、現状のマーケットはいかがでしょうか?

福田:雲行きとしては悪くないです。特に市場をけん引しているカテゴリーは、窓とキッチンですね。ただし窓のリフォームは、「先進的窓リノベ事業」という補助金が1000億円の予算規模で動いているので、純粋な需要とはいえないかもしれません。
その他のトピックスとしては、資材高騰が与える影響も見逃せません。高騰分が価格に転換され、リフォーム料金も軒並み高まっています。今のところそれによって需要が下がってはいませんが、価格の高騰は今後も注目ですね。

若い世代にリフォームが広まるカギ、注目は「ワンストップ型」

LDP編集部:リフォーム業界の変化についても聞かせてください。たとえば、世代間におけるトレンドなどはありますか?

福田:現状、大きな変化はないですね。というのも、市場全体でいえば、リフォームをされる世代は40代以上が全体の9割で、長年変わっていません。加えて、特に多いのは60代の方々です。つまり終の住処として購入した住居を、一部が古くなったからリフォームするという需要がほとんどなんです。

LDP編集部:なるほど。ただ、先ほど中古住宅を購入してリフォームをする需要も生まれたとおっしゃっていましたが、こうした動きは若年層の20~30代で顕著かと思います。また、中古住宅を購入したうえでのリフォームは昔より増えているとも思うのですが、マーケットのシェアでいえばまだ少ないのでしょうか?

福田:そうですね。若年層の、いわゆる一次取得者層が購入した中古住宅のリフォーム市場、こちらは確かに増えてはいるのですが、全体から見れば1割程度。そこまで大きな需要ではないんですね。ただ、今後伸びてくる可能性はあると考えています。

理由はいくつかあり、ひとつは空き家を含め、中古住宅の流通量は増えるだろうということ。もうひとつは、新築で購入するより中古を買ってリフォームするほうが基本的には安いから。可処分所得の減少が叫ばれる中、今後いっそう注目されるのではと思います。

また、定義としてはリフォームとリノベーションに違いはありませんが、リノベーションという言葉が一般浸透するとともに、ポジティブなイメージを持たれる方も多いと思います。そのため、かつてほど中古で買ってリフォーム・リノベーションをすることへの抵抗感も薄いでしょう。

LDP編集部:若い方は特に、中古住宅に対するネガティブなイメージは薄いかもしれません。SNSなどを通して、素敵なリノベーション物件を目にする機会も増えているでしょうし。

福田:情報量が増えたことは大きいですね。また、中古住宅を買ってリフォームをするとなると、かつてはローンは銀行、物件は不動産会社、リフォームは施工会社と窓口がバラバラで手続きも煩雑でしたが、いまでは一社完結で担ってくれる「ワンストップ型」の企業も増えてきました。

中古住宅購入からリフォームまでの抵抗感が薄れてきている。

LDP編集部:大手企業にも、そうしたサービスを提供する会社がありますよね。。

福田:はい。今では中小企業によるワンストップ型サービスが地方にも広がっていますし、拡大した背景にもインターネットやSNS、動画サイトなどの影響があると思います。より長期的な観測としては、海外では高所得層でも中古住宅を積極的に購入するんですね。それは新しさ以上の価値を中古住宅に見出しているからであり、この文化が日本にも浸透すれば、より将来的な可能性も明るいと思います。

2030年までは堅調のリフォーム。その先の未来は?

LDP編集部:リフォームの市場に関して、中長期的な見立てはいかがですか?

福田:2030年ごろまでは堅調に推移するだろうと予想しています。なぜなら、人口減少とともに世帯数が減ったとしても、リフォーム適齢期住宅は増えるから。これは築15年強の住宅を指すのですが、過去に建築された住宅の棟数データをさかのぼると、2030年ごろまではこのボリュームがかなりあるのです。

LDP編集部:ちなみに、ここ数年のコロナ禍が市場に与えた影響についてはどうお考えですか?

福田:与えた影響は大きかったと思いますね。リフォームって、まったくしない方も一定数いらっしゃるんですよ。ところがその中でも、在宅ワークになったり、そもそも家で過ごす時間が長くなったり、10万円の給付金が入ったことで、ライフスタイルや価値観に少なからず変化があった方もいたのではないかなと。コロナ禍で市場が伸びた中には、そういった本来なかったはずの需要が掘り起こされた部分も含まれていると思うんですね。

LDP編集部:確かにそうですね。では先ほど、2030年ごろまでは好調に推移と仰っていましたが、その先の未来はいかがでしょうか?

福田:何もしなければ、シュリンクは避けられないでしょう。というのも、海外と比較すると日本のリフォーム市場は圧倒的に小さいんですよ。
でも、逆をいえば、伸びしろがあるということです。市場が小さい理由はいくつかありますが、ひとつは日本が新築至上主義だから。一方で欧米では築100年以上の住宅もざらにあって、メンテナンスという形でリフォームする世帯が多いんです。
国の例を挙げれば、ドイツは約4000万世帯で日本より1000万世帯ほど少ないですが、市場を円換算すると10兆以上あるんですね。一方で日本は7兆円弱ですから。日本は地震や台風が多く、住宅の耐年数の問題もあるので海外との単純比較はできないのですが、着目すべき点ではあると思います。

リフォーム・リノベにも使える、Doliveのデザイン

LDP編集部:伸び代は期待できそうですね!実は規格住宅もリフォームにいかせている部分があるんですよ。LDPの取扱店の事例で、なかなか入居者が決まらなかった中古マンションの部屋をDoliveのデザインを使ってリノベーションしたところ、すぐに入居者が決まったという事例があります。入居促進であったり、持っている物件のイメージアップであったり、規格住宅が力になれると考えています。

福田:ブランドの世界観が確立された規格住宅を、リフォームやリノベーションに上手く使うのはビジネス的にも広がりがありそうですよね。
ほかにも、考え方次第では日本のリフォーム市場が拡大する可能性はあるのではないかと。たとえば、日本の健康産業って10兆円以上あるんですけど、健康は住環境によっても左右されますよね。言い換えれば、健康への意識が住まいのほうに向けばリフォームへの需要も増えるのではないかと思うんです。

LDP編集部:なるほど、確かに住まいのメンテナンスは健康にもつながる、大事な要素ですね。可能性を感じます。

福田:また、保険産業は30兆円規模の市場ですが、リフォームで健康になるのであれば、医療費の削減につながるかもしれない。そこから付随して、保険契約を見直す機会になるとも思うんですね。私は、日本の方々が気付いていないリフォームの魅力はまだまだたくさんあり、リフォームへの価値観が好転すればマーケットも成長できると考えています。

ーー

TRENDYYY部では、「リフォームの今と未来」を中心にお届けしました。後日公開の記事では、福田さんにより事業者側へスポットを当てたお話を伺っていきます。工務店はリフォームに取り組むべきか? リフォームを生かした住宅会社・工務店の提案方法は? など、気になる情報が満載です。公開をお待ちください!