住宅業界のキーマン「しゃべくり4」が語る、反響を増やすためにやるべきこととは?|リフォーム産業フェア2022
INDEX
introduction
2022年7月26日(火)・27日(水)に開催されたリフォーム産業新聞社主催「リフォーム産業フェア2022」にて、CEOの林がセミナーに登壇しました。24回目を迎えた同フェアのテーマは「Co-creation (共創)」。住宅業界を取り巻く環境や未来について、お馴染みのしゃべくり4メンバーで意見を交わしました。
今回着目したトピックは「反響数の減少」について。反響数が減っている本当の理由を解き明かすことで、今後どういったアクションが取れるのか、4名らしいアイデアが飛び交いました。
「反響を増やしたいけど、何から始めたらいいか分からない…」、「限られたリソースをどこに使ったらいいか知りたい…」という方にとって、この記事がヒントとなり、具体的なアクションを起こすきっかけになれば嬉しいです!
住宅業界における反響数の変化
冒頭で話されたのは、昨今の反響数の変化についてです。自社やクライアントの最新動向や、何が原因で反響数が減少しているかについて、セッションを通じて掘り下げていきました。
お客様が目の前から消えた!?
加賀爪:ここ最近、年間の新築棟数20〜30棟程度の規模感を持つ社長様から「2022年の春以降、目の前からお客様が消えた」という相談を多くいただいています。皆さんの会社やクライアント様の状況は、実際のところどうですか?
乃村:弊社も2022年の春頃を境に、反響数が激減したと感じています。そもそも家を建てる人が減っていたり、住宅価格の高騰で購入できる絶対数が減っているので、ある程度は仕方ないですが…。肌感として、ポータルサイトからの反響が一番減っているのではないかと感じています。
青柳:多くのクライアント様から、反響数の減少について相談を受けるようになったのは、2021年の後半頃からだったと思います。
先日発売された新建ハウジングの雑誌でも、「33%の会社は集客が増えているが、残りの70%近い会社は減っている」といったデータが記載されていました。
ホームページ、SNS、ポータルサイトなど様々な媒体からの反響数が、軒並み減っている印象です。背景として、ウッドショックによる買い控えなどもあるとは思いますが、反響数が激減した企業様は、「たくさんの情報源から、自分の意志で情報が取得できる」という今のお客様のトレンドに乗れてないことが、一番の課題なのではないかと感じています。
反響数が激減したと感じる真の理由
林:ここまでの話を聞いていて、消費者の動きが止まっているかというと、そうではない気がしています。大切なのは、なぜ反響数が減っているのか?という点。広告やコンテンツの発信数が起因しているなど、具体的な原因を読み解く必要があると思います。
加賀爪:3分の1の会社は集客数を増やせているのに、なぜ残りの会社は集客に苦戦しているのでしょうか?その答えは、お客様の検討社数の変化に隠されていると思います。
今まで、新築であれば少なくとも5社〜7社程度の工務店やハウスメーカーを周って最終的に決めるのが一般的だったと思いますが、SNSやホームページなどの情報源が増えたことやコロナ禍をきっかけに、検討社数を2社〜3社まで絞っているお客様が非常に多いんです。
つまり、「目の前からお客様が消えた」のではなく、「7社のなかには入れていたけど、3社まで絞られたときに選ばれる会社になれていない」と捉えるのが正しいと思います。
集客を増やすために必要な「3つの集め方」とは
話は移り、テーマは集客を増やすために必要な具体的施策についてへ。まず、集客を増やすうえで押さえておきたい「3つの集め方」や、どういった認識を持って進めるべきか、各々の意見を出し合いました。
乃村:集客を増やす王道パターンは、自社の強みをマーケティングの力で広げていくことだと思いますが、結果が出るまである程度時間がかかります。そこで、「直近2〜3ヶ月の集客をどうするか?」を悩まれている企業様には、結果につながりやすい「3つの集め方」を提案するようにしています。
1つ目は、お客様を創る「創客」です。リストのナーチャリング(※1)や、紹介・口コミ作りといったアクションを指しています。
2つ目は「集客」で、お金をかけた広告やWEBコンテンツのことです。今はお客様がWEBで企業を認知するのが当たり前の時代なので、広告、ホームページ、SNSなどでSEOをかけて集める動きが必要不可欠だと言えます。
3つ目が「誘客」です。私が奈良でやっている工務店「SOUSEI」では、ターゲットが被る工務店のSEOを全て調べています。どういったキーワードから来ているのか、反対にどういったキーワードで来てくれていないのかを明確化したうえで、競合のホームページでお客様に引っ掛かるキーワードが見つかれば、そこにSEOをどんどんかけていくといった感じです。大切なのは、こちらからアプローチをかけなければ絶対にたどり着けないお客様を、きちんと誘導してあげること。
この3つをWEB上で取り組むことができれば、2〜3ヶ月後に必ず結果が出始めると思います。
※1 ナーチャリングとは?
「見込み顧客から顧客へ」、「既存顧客からリピーターへ」といった、顧客を段階的に育てていくこと。
青柳:「今すぐできることしかやっていないから、集客に困っているのでは?」というのが、私の考えです。
大切なのは、中長期策として自社ブランドや商品の見直しに今すぐ取り掛かることだと思います。そのうえで、目の前にいるお客様数が少ないのであれば、営業をロジカルかつ泥臭くやることで、受注率の向上に徹底的に取り組むべきだと思うんです。
集客に困っていない企業様も、ちょっとプロモーションが他より上手くできているだけだったりするんですよね。たとえ差別化できる商品がなかったとしても、SNSで発する言葉やクリエイティブを変えるだけで、お客様との接点は増やせるはずです。
実際、自社のミドルブランドを5月にリブランドした際、ある有名なイラストレーターさんのイラストを活用してHPに反映しただけで、離脱率が大きく変わりました。
今すぐできることに取り組みつつ、中長期的な施策も同時並行で進めていくことが大切なのではないでしょうか。
林:住宅業界が他業界と大きく異なっているのは、どういった商品を売っているか明確にできていないところだと思います。
小売業では、モノやデザインを目掛けてお客様が集まるのが普通ですよね。住宅業界も、売りたいものをもっと明確化して、買いたい人がいる市場にアウトプットしていけばいいだけだと思うんです。
それでも反響がないのであれば、届いてないだけ。「こだわりの家を一生懸命作っています」とか「いろんな家を作ってます」といった一方的な発信では、広告を見てもらえなくて当然です。お客様が何を知りたいかをもっと追求すれば、変わるんじゃないかなと思います。まずは、自分たちがリバースエンジニアリング(※2)する必要があるということですよね。
「住宅業界はレッドオーシャンだ」という言い方をされると思いますが、私はブルーオーシャンと捉えています。だって、いろんなニーズの市場があって、今もなお市場が作られ続けているのであれば、そこはブルーオーシャンじゃないですか。皆さんが例えるブルーオーシャンは「何もない未開の世界」だと思いますが、そんな世界は天才しか勝てないんですよ。
だから、今やるべきは他社との優位性を高めることで選ばれる会社になること、これ一択だと思います。
※2 リバースエンジニアリングとは?
完成品からその設計を逆算して、製造方法や構成部品、技術情報を明らかにする作業のこと。マーケティング業界においては、Webサイトやカタログ、広告などの完成品をリバースエンジニアリングすることで、設計思想を読み解くことができる。
反響数が激減した会社が、今すぐ強化すべきこととは?
最後に、「今すぐ始められること」を前提に、反響数が減少した会社が注力すべきポイント、やるべき施策を出し合いました。資金やリソースが限られている小さな会社でも取り組める施策は必見です!
大切なのは「何に注力すべきか?」の本質を捉えること
乃村:「SOUSEI」のホームページは、月間のユニークユーザーが約5000人なのですが、来場につながっているのは毎月10組程度です。つまり、ざっと見積もっても4990人は取りこぼしていると言えるんですよね。何かしら関心を持って来てくれた人が、何らかの理由で4990人も離脱している…だったら、5000人をどう増やすかではなく、どうやって離脱を減らすかにコストをかけた方が絶対に効果が高いし、より本質的なんじゃないかなと感じています。
もう一つ忘れてはいけないのが、受注率です。伸びている工務店様に共通しているのが、受注率の高さ。30%〜40%超えが当たり前で、来場してからお客様の引きつけっぷりが半端ないんですよね。
マイホムで行っている「トップセールスインタビュー」でも、年間20棟以上売っている方が口を揃えて言うのが、「初回来店時に、お客様の建築動機を必ずヒアリングする」ということです。そこが納得いくまで、物件も提案しなければ、モデルハウスも見せないそうなんですよね。
つまり、受注率を高めるには「どんなものが欲しいですか?」の前に、「なぜ家を建てるんですか?」といったフェーズが必要で、お互いのコンセンサスが取れるまでしっかりと話をすることが大切なんだと感じています。
加賀爪:乃村さんが仰った、「まだ見ぬお客さんを探しにいくのはもうやめませんか?」というのが的を得ているのかなと思います。反響が減ったと感じている企業様も、反響が0ではないと思うんですよね。営業力を強化することで、目の前に来てくださったお客様の受注率を上げることに注力するのが本質と言えるのではないでしょうか。
林:受注率を上げるうえで必要なのは、やっぱり信用だと思うんです。みんな、買う根拠が欲しいんですよね。
住宅業界は、デザインよりも信用が勝る、唯一に近い業界だと感じています。だから、多くの方が名の知れた大手ハウスメーカーを選択して当然なんです。ただ、時代的にちょうどその認識が変わる転換期が訪れていると思うので、会社の規模を問わず戦える時代がきていることも事実です。これからは、デザインにこだわっていたり、若い人に刺さるような面白いことをやってる企業様が選ばれる時代になっていくことは間違いないと思います。
青栁:経営視点で言うと、スーパー営業マンが1人辞めたら年間数億の売り上げがなくなるような状態は、健全な経営ではないと思います。
営業に頼らないために必要なのが、クオリティマーケティング(※3)の考え方です。ちょうど今、オークションマーケティング(※4)から、クオリティマーケティングへと変わってきています。
昔は新聞広告やWeb広告でも、大きく広告をかけた会社が勝つ時代でしたが、コロナ禍を機にトレンドが変わり、小さな会社でもクオリティの高い情報発信ができれば、小予算で顧客を獲得できる時代に変わってきたなと感じています。
もちろん営業力が強いにこしたことはないですが、強引な値引きで受注するような営業は会社の資産にならないので、注意したいポイントですよね。
※3 クオリティマーケティングとは?
広告費をかけずに、コンテンツでファンを獲得していくマーケティング手法のこと。
※4 オークションマーケティングとは?
「広告マーケティング」と同義で、いわゆるTVや新聞、ラジオなど、広告費を支払って集客を行うマーケティング手法のこと。
資金力やリソースは関係ない!今すぐできるアクションとは?
加賀爪:少し話は出ましたが、お金がかけられない場合、すぐできる施策としてどんなものがあるかアイデアをだし会えたらと思います。
もちろん、プラスアルファのお客様を見つけにいく作業も大切ですが、SNS広告に5万、10万費やすくらいなら、OB・OGさんに「頼むから今月一組紹介して」と直接お願いする以上の効果が得られるマーケティングはないと思っています。
たとえ反響が減ったとしても、契約率80%〜90%を目指せすことで、短期的に勝負できると思っています。これが、半年先の成果として如実に現れると思うので、泥臭くてもまずは身近なところからできることをやっていくのが一番かなと思います。
乃村:お金をかけずにできることであれば、OB・OGインタビューですね。「なぜうちで建ててくれたのか?」を深掘りすることで、得られた回答を自社の強みにしていったらいいと思うんです。
やっぱり、強みを一番知っているのはお客様なんですよね。「あなたの会社はこんな会社」と言ってくれているのに、インタビューもせず、自社には強みがないと迷路に迷い込みがちな企業様が多いと思うんです。
引き渡し済みのお客様10組と1組1時間ずつ喋るだけで、答えははっきり出ます。逆に言うと、強みのない会社は、お金をかけたって集客できませんからね。まずはここに時間をかけるべきではないでしょうか。
青柳:例えば、お金がないのに、今だに新聞の折り込みチラシを一生懸命やってるような企業様がいたとすれば、単純に時代のトレンドを読み違えていると思うんです。
新築を売っているのであれば、折り込み広告を一切なくし、そこにかけるお金をクオリティマーケティングにあてていくのが良いと思います。大切なのは、広告費の金額ではなく、掲載する情報のクオリティを上げていくことです。自社の商品やブランド力の前に、まずはお客様から見える、見た目を良くしていこうという意識を持って発信していくだけでも、絶対に反響は変わってくると思います。
林さんが言うように、売りたい商品があり、そこに市場があるのであれば、届け方のクオリティや情報の提供方法を考えさえすれば、他社に勝てる可能性は十分あると思っています。
もっと身近なことで言うと、商品の価格帯と自分自身のギャップをなくすことも一つですよね。服装や手に持つアイテムにこだわることで、お客様が一生に一度の買い物を買う相手としてふさわしい人間になろうとする意識が、信頼を得るための第一歩なのではないかと思います。
林:ブランディングにおける信用で一番強いのは、実は距離なんです。そもそもそれを忘れている企業様が多いと思うんですよね。まずは、自分たちの地域で知名度と信用を勝ち取ることがことが、成功する一番の秘訣です。
もし私が地方で工務店を経営しているのであれば、メニューを記載した手作りチラシを持って社員と近隣の住宅に挨拶して周ります。実際に、これが一番最強のマーケティングなんですよ。他には、人を集めるためにマルシェを開催したりも然り。もちろん、クオリティの担保、クリエイティブにも力を入れていくでしょうし、営業を強める努力も必要だと思いますが、距離が最も大切な信用だという事実は変わらないので、まずはそれをとことん活用するべきだと思います。
まとめ
具体的なアイデアや施策がたくさん語られた今回のトークセッション。すぐに取り入れられるヒントが、たくさん得られたのではないでしょうか?
反響が減少した原因を的確に捉えることで、今できることにコツコツと取り組んでいくこと、さらには大切さを見落としがちなOB・OGさんの存在や、今あるリソースを大切にしていくことで、会社の規模に関係なくまだまだ戦える環境があることに気づくきっかけになったのではないかとも思います。
ぜひドリルの1ページ目として、今この瞬間から行動に移していただければと思います。
今後も、セミナーへの登壇や、しゃべくり4のトークセッションは定期的に開催していく予定です。ぜひ住宅パーソンが一緒になって、住宅業界の未来を盛り上げていきましょう。
引き続き、LDPとして今までにない新しい取り組みにもチャレンジしていきたいと思っていますので、どうぞお楽しみに!
今回のセミナーの様子は、後日しゃべくり4のYouTubeでも配信予定です。そちらもぜひご覧ください。
株式会社myhm founder 乃村一政
株式会社サンプロ 代表取締役 青栁弘昭
株式会社ダンドリワーク 代表取締役 加賀爪宏介
LIFE LABEL / Dolive 主宰 林哲平