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もはや知らぬは危ない「意匠権」。その対策とリスク回避術

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INDEX

田村さんプロフィール

広告会社で約5年間働いたのち、LDPにジョイン。広報宣伝チームにて、各住宅商品のプロモーションや新商品開発を担当したのち、営業事業部のマネージャーに。
総合広告代理店で培った知見を生かして、ブランドに関わる各プロジェクトを横断したディレクション業務を行いつつ、延べ500社以上の経営層とのセッションから得た経験値を武器に、さまざまなケースの経営課題に対してコンサルテーションを行う。

意匠権とは?住宅業界では訴訟事例も…

「意匠権」というワード、最近では聞き馴染みのある言葉になっていますが、その内容についてはご存じでしょうか?

意匠権とはデザインに対して与えられる独占排他権のことで、日本における意匠権は、1888年(明治21年)の意匠条例がはじまりです。
以後数回の改正後、1959年(昭和34年)に特許法と同時に全面改正されたものが現行の意匠法で、2020年4月1日からは、建築物や画像の意匠が新たに保護対象となりました。

建築物は外観だけでなく、内装も含まれます。なお、内装に関しては机やイスなど複数の組み合せや配置、壁や床などの装飾によって構成されるデザインも、全体として統一的な美感を想起させる場合は保護対象となりました。

法改正前は、施主から提供された画像などを元に、「この写真のようなデザインにしてほしい」と依頼され、建てるケースが少なくありませんでした。しかし法改正後は、そういった設計が訴訟や賠償責任などにつながるリスクが高まったのです。

住宅業界でも、ある事例があります。A社が出している企画型住宅の外観が模倣された件です。同社は過去に、商品の一部デザインの意匠権を取得していました。

しかしA社が意匠権を取得した翌年、とある住宅会社が類似したデザインの住宅を分譲したのです。A社は被告の企業を相手取って東京地方裁判所に提訴し、意匠権侵害が認められる結果に。この判決は、住宅建築の意匠権(部分意匠)が認められた初の事例となりました。ちなみに、被告対象は施主ではなく住宅会社や工務店となります。

この事例以外にも、法改正後は自社のブランドを守るためにデザインを保護登録する住宅会社が増加。いまや、住まいの作り手にとって、意匠権は見逃せないキーワードなのです。

意匠権を深く知る。まずは意識改革から

放っておくとリスクになりかねない住宅の意匠権。では、どう対処していくべきか?基本的なことになりますが、まずは「意匠権についてしっかり知る」ことが大切です。

どこに登録されているのか、確認するにはどうしたらよいのか、過去の事例はどうなのか、以前デザインを真似て自社が建てた物件は抵触しないか、どの範囲が対象となるのか、などを知っておく必要があります。

社内に法務担当がいればまだ安心ですが、そうでない場合は尚更、早めに知っていくことが大事です。万が一に賠償責任が生じた場合、資本力が潤沢でない中小企業に関しては特にダメージも大きいですから、その点でも急ぐべきだといえるでしょう。

そして意匠権を知ったうえで、重要なポイントは「真似る」から「参考にして設計する」という意識変革。そのうえで、参考にして作ったデザインが独自のクリエイティブであることをロジカルに説明できることが大切です。

たとえば施主さんが「この写真のようなデザインにしてほしい」とイメージを持ってきたとしましょう。その際、「このデザインは他社○○の意匠権に触れる可能性があるので、このままではリスキーです。なので、○○を○○のような形にして設計しませんか?」と。

加えて、自社の設計力を強化すること。特に若い会社の場合、設計士さんの経験値が追い付いていないケースもあり、どこか既存のデザインと似通ってしまうことが出てくることもあると思います。そこを、リソースに投資して人材を増やしたり、経験豊富な外部の設計士さんに委託したり、社内の若手を教育してもらったりと、対策をしていくことが重要になってくるでしょう。

あとは、デザイン住宅を扱っているメーカーとフランチャイズ契約や提携をするという選択肢もあると思います。

登録意匠はまず検索。自社デザインの申請も検討しよう

意匠権についての情報は、経済産業省・特許庁のサイトに詳しく掲載されていますし、登録意匠は、専用のデータベースサイト「特許情報プラットフォーム」から項目ごとに検索できます。特徴的なデザインを用いる場合は、事前に調べておいたほうがよいでしょう。

一方で、意匠権を取得する意識も大切です。苦労してデザイン性の高い住宅設計ができたとして、それを競合に真似されたくない、流用されたくないと思うのは自然なこと。であれば意匠権で保護すべきですし、自社の規格住宅としてパッケージ化するのもありだと思います。

気をつけなければいけないのは、すでに世の中に出ている意匠については遡って申請ができないという点。申請する場合は、まだWEB上にもどこにも出ていない考え方とロジックのデザインでなければなりません。当社の場合も、20年の法改正以降に新しく登場した新商品デザインについて、意匠登録の対応をしています。

また、目的も考えてみましょう。もちろん、自社で手掛けたデザインを守るため、でも構いません。
LDPの場合は、運営する2つの住宅ブランド商品(LIFE LABEL、Dolive)を建てたいと言ってくださるお客様と、商品の権利を導入いただいている取扱店の皆さまの権利を守るために意匠権を取得しています。安心して、当社ブランド商品を指名・利用してもらうための意匠権といえますね。

恐れず、うまく付き合おう。

意匠権を恐れる必要はありません。住宅会社が意匠権を登録することで得られるメリットは、多岐にわたるからです。他社によるコピーや意匠登録の防止、競合他社のけん制、ライセンス料獲得の可能性、製品やプロダクトのブランド価値向上、販売中止のリスク回避など、いくつも挙げられます。

中小の住宅会社さんが、自社のオリジナリティーを強みにする際の手段にもなりえる意匠権。登録数は今後ますます増えていきますから、繰り返しになりますが意匠権を深く知るとともに、上手に付き合っていくことが非常に大切です。

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