集客の課題を解決?高い施工技術を持つ工務店が持つべき、“パートナーシップ”の考え方
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施工現場に欠かせない職人の技術。職人の中には、その高い技術を強みに独立し、工務店を経営している方も多くいます。しかし、実際に経営をしていくには、技術だけでは生き残っていけない現状も…。そこでLDPでは、日本最大級の建設事業者向けマッチングプラットフォーム『ツクリンク』社長の内山達雄さんにインタビューを実施。建設現場のリアルに向き合い続けてきた経験をもとに、高い技術を持つ職人や工務店がどんな武器を身に付けたら良いか、話を聞きました。
施工現場で磨かれる職人の技術。そこにある課題とは?
ーーまず、内山さんから見て、住宅を含めた建設業界の職人の現状について教えてください。
内山さん(以下、敬称略):まず前提として、現場で働く職人の技術は相当高いものがあると思っています。私自身、とび職として働いていたことがあるのですが、職人の中には、コンマ何ミリの違いにこだわる人がたくさんいる。「既製品の替え刃だと感覚がずれるから」と、丁寧に道具を研ぎ続けている姿を見てプロフェッショナルだなと思っていましたね。
でも、一方でそんな技術やプライドは、なかなか表には出てこない。ユーザー側も、コンマ何ミリの違いなんてわからないじゃないですか。それに、現在は予め加工された部材を現場で組み立てるだけのプレカット工法も広がってきています。そうなると余計に技術が可視化されにくくなっていく。本当は、プレカット工法だとしても、ボルトの締め方ひとつで建物に微妙な歪みが生じたりもするんですけどね。
ーー職人の技術の高さが可視化されていないんですね。
内山:はい。あとは技術がある職人の中には、独立して工務店をつくっていく方も一定層います。でも、建設業界って地域に特化しやすい分、商圏が被ってしまったり、関係者との人間関係もあったりして、独立しても身動きが取りにくいケースも少なくありません。
内山:ちなみにツクリンクが職人と発注者を繋ぐマッチングサービスを運営しているのも、技術を持った職人さんが、適正な条件で仕事を受けられるようにするのが狙い。決して営業が得意な人が多くはない業界だからこそ、経歴や実績を可視化することで、あるべき受発注のかたちが実現できたらいいなと思っています。実際に私たちのサービスを使って、個人事業主から法人化して工務店をつくった方もいるんですよ。
ーー職人の選択肢を増やしていく、と。
内山:そうですね。たとえば、一流の大工さんが安い金額でずっとA社としか付き合えなかったところに、より高い報酬をもらえるB社と取引できる機会が与えられたとしたら、もちろんそちらの仕事を受けますよね。そうなると、A社も報酬を見直さざるを得ない。そんな正当な競争環境をつくれればいいなと思っています。ちゃんと技術を持った人のところに好条件の仕事が集まり、独立を含めた選択肢をつくれるようにしたいんです。
独立後の課題は「集客」。足りないスキルは、外部とのパートナーシップで補完しよう
ーーいざ独立をした後は、どのような課題があるのでしょうか?
内山:これまでツクリンクとしても交流会やユーザーインタビューを数多く実施してリアルな声を集めてきました。その中で、課題として挙がるのが集客です。事業を行う上では、やはりお客さんがいないと始まりません。たとえ技術があっても、それだけでは立ちゆかないのが現状です。
ーーそれでは、どのような対策をすればよいのでしょうか?
内山:ひとつはネットワークをつくること。たとえば、「家を建てる技術」を活かすために、そもそも注目を集めるデザイン性の高い家を設計することも必要だし、そこにお客さんを呼んでくる施策も欠かせません。そういった自分たちにはないノウハウや知見を、外部のつながりによって補完していくことが大切になっていくと思います。
ーー自分たちに足りない部分を、外部のネットワークを活かして補うんですね。
内山:そうです。しかも、一度独立したら、何かを教えてもらう機会はとても少なくなる。ずっと成長していくためには、自分から学びに行く姿勢がとても重要になります。その点、LDPのようなフランチャイズに入ることはひとつの手段だと思います。「こんな考え方があるのか」「こんな商品があるんだ」など、自分の知らなかった知見に触れたり、世界を広げたりすることができるので、自然と学びが深まる環境をつくることができますから。あと、営業や集客面のサポートをしてくれることも大きい。単に「規格住宅商品を自社で扱えるようになる」こと以上のメリットがあると思います。
フランチャイズ加盟はあくまで手段。「ブランドを使う」意識でいれば、成長につながる
ーー内山さん自身、LDPに対しては、どのような印象を持っていますか?
内山:LDPの加盟店が集まる全国大会に、私も参加させていただいたことがあって。そのときに、こんなに楽しそうなフランチャイズがあるのかと驚かされましたね。正直、それまでフランチャイズというと、本部の制約が厳しかったりして、加盟者側との関係性がそこまで良好ではないようなイメージを持っていたんです。でも、会場では、本部側も、加盟店側も、一緒になって楽しんでいました。みんなでひとつの方向を向きながら楽しむ。それでいて熱量高く取り組む。そんな光景は、とても新鮮だなと思いましたね。
ーーありがとうございます。全国大会はブランドの取扱店となる工務店さんの気持ちを高められればという思いで開催しているので、それが伝わって嬉しいです。
内山:フランチャイズ加盟は、あくまで一つの手段。「ブランドに使われる」という意識ではなく、逆に「ブランドを使う」という意識が重要だと思います。自分がやりたいことは何か、そのための武器は何か。そうしたことを考える中で、自分たちに足りないパーツを見極めて、そこをフランチャイズ加盟することで補えるのであれば、取り入れればいいと思います。
たとえば、独立して工務店を設立したい場合、「家をかたちにする施工技術」という武器はあるけれど、「デザイン性の高い住宅商品をつくる開発力」「お客さんを呼び込む集客力」がない。その場合は、両者の強みをもったフランチャイズに加盟すれば、パーツは揃いますよね。
ーーそうですね。LDPの強みもまさにそこにあるので、商品力や集客力が弱いと感じている工務店や職人さんの力になれるかと思います。
内山:ちゃんと自分の強みを活かせるか。足りないところを補ってもらいながら一緒に成長できるか。まずはいろいろなところに相談しながら、いいパートナーシップを築ける相手を見つけていってほしいと思いますね。もちろんツクリンクも、さまざまな選択肢やきっかけを提供していきたいと考えています。
ツクリンク株式会社 代表取締役社長 内山達雄さん
ツクリンク株式会社 代表取締役社長 内山達雄さん
大学中退後、とび職として働き始める。建設会社の管理職を経てフリーのWebデザイナーに転身。起業家家入一真氏のイベントをきっかけに集まった仲間と2012年にハンズシェア(現ツクリンク)を創業。13年に職人の求人や工事の受発注が無料でできる建設業マッチングプラットフォームサイト「ツクリンク」のサービスを開始。